コラム(不定期更新) 怖いネカフェの話

♯97 中本食べて星になった

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辛いものが苦手である。

辛さに耐えられないことに加えて身体が受け付けない。

 

以前、千葉の勝浦で名物の勝浦担々麺(辛口)を食べたら食後一時間程度、鼻水とクシャミが止まらなかった。嫌がるぼくに悪ノリで辛口を薦めた先輩もドン引きするほどだった。詫びろ詫びろ。

 

その経験があったのに。

苦手だと知っていたのに何故…。

 

ある日のこと、ぼくはフラリと最寄りのセブンイレブンに行った。

 

カップ麺の棚に蒙古タンメン中本(辛旨味噌)。前述のように辛いのがすこぶる苦手なので当然中本の実店舗には行ったことがないし行く予定もない。

 

「北極美味しいよね〜今から中本行く〜?」と知り合いの女のコたちが盛り上がってるときも何の恥じらいもなく「あ、辛いの無理なんで」と言ってその場を白けさせるくらいだ(そもそも誘われてなかった可能性もある)

 

しかし何故かその日、本当に何故かわからないが中本のカップ麺を買ってみた。

疲れていたのかも知れない。

 

行ったことはないが、ここ数年で「中本」という単語が日常会話に登場することが確実に多くなった。「中本」は「天下一品」や「ラーメン二郎」のように完全に市民権を得た存在にまで登り詰めた、とぼくは思う。人気番組のアメトーークでも「中本芸人」で特集していたくらいだ。

 

なので勝手に親しみを感じていたのかも知れない。

 

試したことがないだけで実は自分に合うのかも。

 

何事も食わず嫌いは良くない。やる前から否定するのではなく、やってから否定。石橋を叩いて叩いて結局渡ろうとしない、そんな頭でっかちな人間になってはいけないと常々自分に言い聞かせている。

 

それに千葉の勝浦担々麺の話も4年くらい前だ。それから沢山のモノを食べたぼくの舌は知らぬ間に辛さに耐えられる仕様にアップデートされているかもしれない。

 

そんな淡い期待と人気店の味への興味が合わさり、ぼくは帰宅してカップ麺に湯を注いだ。

 

3分間待つ。学生の頃、友人とカップ麺を食べるときに時間を測ったら「カップ麺で時間測るやつ初めて会った…こんなんいつも大体だろ」と言われた嫌なことを思い出す。

 

3分経って蓋を開ける。

辛そうな地獄の香りが漂う。

 

地獄に箸を突っ込み、持ち上げて身体中の酸素がなくなるレベルでフーフーして冷ます。

 

そして食す。

 

あれ、そんなに辛いかな?

 

 

次の瞬間、昇天した。

 

 

眼球が破裂し、蛇口をひねったかの如く鼻水が流れ落ち、唇が瞬く間に分厚いセクシーリップに腫れ上がった。今は亡きお婆ちゃんと縁日に行った遠い記憶が頭をかすめる。

 

 

ヤバい、死ぬ。

 

 

かろうじて残った意識で眼球を拾い集め、うりゃ!っと本来の位置に再び押し込み、思った。

 

「あ、これ食べれないわ」

 

そこで気付く。

付属の「旨辛オイル」を入れてない。

 

恐る恐る入れてみる。この時点でほぼ意識はない。

どうせ食べるなら正式な味を楽しもう。真面目な性格が死を近付けた。

 

行こうぜ、ピリオドの向こうへ。

 

このあとのことは覚えていない。

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