プロフィールにも記載せず、特別誰にも話していないので一部の人しか知らない話なのだが、実はあるベテラン俳優のお手伝いをしていた時期がある。
プロフィールに載ってるのは歌舞伎役者の付き人時代。
それとは別件で2011年に半年ほど別の俳優の付き人的なことをしていたことがある。
成り行きで一度手伝ってしまったが、その頃はもう自分のチカラで芝居道を進みたかったので、付き人としてぼくを傍に置きたいその方とは長続きしなかった。
しかしその短い時間に一生忘れられない大切な言葉をもらった。
そのひとつが「若さ」にまつわる言葉である。
その頃ぼくは26歳だった。
若い頃というのは本当に無知で愚かで自分の居場所が見えてなく、色んな人の失敗談を聞いても学習せずに「自分だけは例外」と思い、いつか成功する自分を信じきっていた。
ある日、その俳優からこんな言葉を頂いた。
「いいか、お前の武器は『若さ』だ。だがそんなものはすぐに無くなる。」
この言葉、当時はへぇ〜くらいにしか響かなかったのだが、自身が俳優としてこの世界に身を置くことで徐々に重みを増していった。
端的に言えば自分が若者でなくなっていく度にその言葉が身に沁みた。
多くの若い俳優は「若い」というだけで、どこか安心している。特にルックスで重宝されている俳優はそうだ。かつてのぼくがそうであったように「自分だけは成功できる、例外である」という謎の自信で溢れている。
自信があるのは素晴らしい。
ただ現実は甘くない。
時間が流れ、「若さ」というステータスが失われたときに自分に何が残るのか。
それを踏まえて若い頃から正しい勉強をしなければいけないと思う。
30歳を皮切りに俳優がガクンと減るのは、ちゃんと努力ができてなかった人達が通用しなくなるからだ。かつての自分のポジションは現役の若い俳優がやっている。
いつか必ず失われる「若さ」だけを武器にするのは無謀でしかない。
アイドル界隈の話など、特に悲惨である。
10代の早い時期からアイドルになり、一般教養を身に着けずに大人になってしまった人は、年齢と共に自身の人気がなくなったときに「アイドル以外のこと」を全く知らない。
なのでアイドル引退後は少なくなっていくファンに媚びるか、怪しいイベント業に手を出して日銭を稼ぐケースが増えている、と聞いたことがある。ずっと第一線にいるのは雀の涙ほどの人間だけだ。そして彼らは多大な戦略を練り努力を続けている。
ぼく自身、大きく見ればまだ若い部類にいるのかもしれないが、「若さ」を前面に押し出して仕事をしている自覚など全くない。
「いいか、お前の武器は『若さ』だ。だがそんなものはすぐに無くなる。」
若さというメッキが剥がれたときに自分には何が残っているのか。
自分が若い頃にこの言葉に出会えたのは、人生においての大きな宝であるし、今後の人生でも多くの後輩に伝えていきたい。