コラム(不定期更新) 怖いネカフェの話

♯105 歌舞伎の話~その五

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2.5次元歌舞伎で話題になって良かった!ではなく、そこから古典に興味を持ってもらわなければいけないのだが、その鮮やかな動線は今のところ確立されていない。個人的には分かりやすく「2.5次元歌舞伎公演に来てくれた方に歌舞伎座の割引券を渡す」でもいいと思う。

 

あとはネットをメインとするメディアの活用。

とにかく多くの人の目に歌舞伎が触れるようにしていかないと未来はない。今の時代に沿った「手軽に観れる歌舞伎」が存在すべきなのだ。

 

普通に生活してる人が歌舞伎に触れることはまずない。だからこそ露出を増やして分母を爆発的に増やす必要がある。沢山の人に触れてもらえれば必ず興味を持つ人が出現する。それは何千人にひとり、何万人にひとりかも知れないが必ずいる。

 

のんびり救世主を待っていても現状は何も変わらない。

 

何度も言うように「歌舞伎役者の存在」を守る為だけなら、今のように新作歌舞伎で話題を集め、本来の歌舞伎座はガラガラでも構わない。しかし伝統ある「歌舞伎」そのものを守る為には、古典をもっと身近に感じてもらえるような戦略が必要不可欠だとぼくは強く思う。

 

以上、ここまでが「歌舞伎の客離れ」である。

 

考えをまとめると「どうにかして歌舞伎との遭遇率を上げろ」ということだ。

好きも嫌いも、知らなすぎては判断材料にもならない。

 

格式高い伝統芸能だから、安っぽい真似はできないのかも知れない。

しかし歌舞伎側から近付こうとしなければ、一般人との溝は更に深くなる。

 

誰も興味がないものを守っていく必要があるのか、そんな声が聞こえてくる前に抜本的な改革が必要だと強く思う。

 

次に「現代社会との乖離」について思うことを書いていく。

 

歌舞伎は言うまでもなく御曹司制度が優先されて役者の優劣が決まっていく。名門の家に生まれた男児は幼い頃からお目見得、初舞台と歌舞伎ファンに温かく見守られて育っていく。

 

最初は当然芝居が下手くそだが、そこから長い年月を掛けて一流の役者になっていく様を応援する。

これが歌舞伎のシステムである。

 

世界中の芸術に精通しているわけではないが、この制度は極めて珍しいのではないか、と常々思う。

普通に考えたら「人より上手だから舞台に立てる」のが一般的だ。しかし歌舞伎は違う。違うのだ。

 

逆に一般家庭に生まれて、どうしても歌舞伎役者になりたい人は弟子になるしかない。

研修所を経て幹部俳優の弟子になる。そこで何年も修行を積み、少しずつ大きな役をもらえるようになる。

 

とは言え、御曹司でない役者が歌舞伎座で主役をやるなんてまず不可能である。

どれだけ実力があろうとも、何よりも優先されるのは血筋だから、だ。

 

血筋があれば経験ができる。

何度も経験を積めば誰だって芝居が上手になっていく。

 

これが歌舞伎の世界。

 

ぼくは思う。

このシステムは現代社会と逆行している、と。

 

You TubeやInstagram、TikTokの出現でアイデア次第で一般人が芸能人よりも有名になれる時代である。

 

それなのに、歌舞伎は生まれた瞬間に勝負がついている。

 

勿論、御曹司は御曹司同士の覇権争いがあるのは分かるし、幼い頃から計り知れないほどの稽古をしているのも分かる。しかし、努力した者が報われることを大衆が強く望む時代に、この「御曹司は最初からチャンスがある、一般人はない」というシステムは世間に許容され続けるのだろうか。

 

歌舞伎の根幹が大衆に受け入れられない時代になってきたのではないか、と感じてしまうことが多々ある。

 

続く。

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