コラム(不定期更新) 怖いネカフェの話

♯94 たまごっち

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小学生の頃、たまごっちが爆発的にブームになった。

 

知らない人(そんな人いないだろうが)の為に簡単に説明すると、たまごっちは持ち歩き可能な卵型の携帯ゲームで、画面の中で「たまごっち」と呼ばれる謎の生物を飼育して遊ぶ代物だ。

 

食事を与えたりトイレの世話をしたりと、その生物とコミュニケーションを取り、その時々の環境に応じてその生物が別の形態に進化していく。

キャラクターも可愛く、ボタンも3つくらいで操作も簡単。本体もその名とおり卵型で可愛らしい。

 

どういう要因が重なったのかは幼かったので詳しく知らないが、とにかくたまごっちはあっという間に話題になり空前の大ヒット商品になった。

 

どれだけ売れたかというと…まず買えない。

どこにも売ってない。欲しくても手に入れることがほぼ不可能。

 

おもちゃ屋では次回入荷の際に取り合いにならないように予め抽選販売という形を取っていた。

購入希望者はおもちゃ屋にある用紙に連絡先を記入して、当選すれば後日入荷時に店舗から電話をもらえる。当選者のみ購入可能で、それだけでまた品切れ。店頭に商品が並ぶことはない。それほどまでに超絶人気商品だった。

 

ぼくもそんなたまごっちが欲しい可愛い子供っちの1人だった。

自転車でおもちゃ屋を巡っては売り切れを確認し、抽選用紙に名前を書いても全然当選しない。

欲しくてもずっと手に入らない。

 

あの頃は日本中にそんな子供が溢れかえっていた。

 

そんなある日、急にたまごっちが手に入った。兄の名義で抽選が当たったのだ。というか兄が抽選に参加していたことすらぼくは知らなかったのだが。

 

我が家にあの「たまごっち」がやってきた。

あのときの感動は今でも覚えてる。

 

まるで本当のペットを飼うかのように母と兄と3人でたまごっちの世話をした。

今思うと凄い。あんな小さな携帯ゲームで家族が盛り上がっていたのだから。

 

小さな卵のような形態から徐々に進化してたまごっちは姿を変えていった。

姿を変える度に家族が沸き、あのとき間違いなくたまごっちは家庭の中心にいた。

 

そんなある日のことである。

 

いつものように友達の家から帰るときに自宅に電話した。

すると何故か母親が焦っている。「たまごっちからピー、ピー、ピーと音がして鳴り止まない」と。

毎回その場合はお腹が減ってるかトイレを掃除してほしいのどちらかなので、それを伝えると、そうではないと言う。初めてのことでぼくもよくわからなかった。

 

帰宅すると、たまごっちが死んでいた。

 

そう、あのゲームはどれだけ丁寧に大切に育てても、たまごっちは遅かれ早かれ最後は寿命で死んでしまう仕様なのだ。(もちろん別の生物をまた最初から育てることができる)

 

ぼくも母も知識としては「たまごっちは死ぬ」ことを知っていたけど、体験するのはそのときが初めてで、それまで本当のペットのように接していたので深く悲しみ、そして泣いた。

 

今みたいにカラーで滑らかに動く画面ではない。モノクロでカクカクと右と左にしか動けない平面の生き物で、だ。

 

あの頃、我々のようにたまごっちが死ぬことでペットロス症候群的な状態になる人が全国的に多かったという。それくらいひとつのおもちゃが生活に深く紐付いていた。

今でもこうしてそのときのことを文章にできるのが、紛れもないその証拠である。

 

2年くらいでブームは終わり、その後は「懐かしいね」で終わってしまうたまごっちだったが、あのゲームでの思い出は沢山残っている。

 

しかし冷静に考えたら飼ってた「たまごっち」のこと、ずっと「たまごっち」って呼んでたんだよなぁ。犬を「イヌ」と呼ぶようなモノだ。

 

商品名じゃなくて、その都度なんか特別な名前を付けて育ててあげても良かったな、と25年以上経った今になってふと思う。

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