コラム(不定期更新) 怖いネカフェの話

♯57 諦めちゃった人

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貴方が犯罪を犯さない理由は何か?

 

職を失わない為、家族に迷惑を掛けない為、警察に捕まらない為、刑務所に入らない為。

各々理由はあるだろうが、これらを総じて言い換えるなら

 

「社会的信用を失わない為」

 

に尽きるだろう。

 

人間社会は信用第一主義である。

信用を失えば社会に関わることはできず、働けずお金も得られず、自身の存在に引け目を感じて目立たぬように生きていくしかない。

 

これはまさしく生き地獄である。

真っ当に生きてる全ての人間がその状態を避ける為に犯罪行為に手を染めずに生きている、とぼくは思っている。

 

犯罪だからやってはいけない、を一歩踏み込んで言語化したらそういうことだ。

 

だがしかし、社会的信用を失うことに何の恐怖もない人間がいたらどうなのか。

それはもう一般人とはかけ離れた倫理で生きてる「人間に近い何か」ということになる。

 

ネットカフェでアルバイトをしているときに何度かそういう人間に遭遇した。

通称「諦めちゃった人」。

 

退店時に利用料金を支払うシステムなので、「元々お金を持ってないのに入店して帰りにそれが発覚する客」というのが週に一度くらいは出現していた。

 

その多くが「(店内で)財布が盗まれた」や「持ってると思ったが足りなかった」などの見え透いた嘘を重ね、自分の罪を少しでも軽くしようとする。

 

そして共通しているのは警察を呼ばれることに異常なまでに抵抗することだ。

正直、それが嘘か本当かはどうでも良い。ただそんな奴らばかりだったので働く側も対応には慣れていた。

 

だが時に、先程説明した「諦めちゃった人」が現れる。

 

彼らはまず動じない。

何をされても、何をしても動じない。

 

そして表情も変わらない。

ずっと虚ろでただそこにいるだけだ。

 

「お金ありません」

 

「家にはありますか?」

「ありません」

 

「警察呼びますけど?」

「はい」

 

そして淡々と警察に連れられていく。

対応としては見え透いた嘘をつく連中よりもずっとラクである。抵抗する気も自分をよく見せようとする気持ちもないからだ。

 

ただ接しているときの「人間なのに人間とは思えない体温の無さ」は大きな違和感としてこちらに残る。彼らは仮に殴られても反応しないのではないか、とぼくは思った。

 

そこにいるけど、いないような。

何かを成すとは程遠い、ただいるだけの人。

 

彼らは自分を諦めてしまっているので、犯罪を犯すことを何とも思っていないのだろう(少なくともこちらにはそう見える)。

 

ぼくは彼らが怖い。

社会的信用を失うことを恐怖に思えない人間は怖すぎる。

 

勿論何かが彼らをそうさせたのはわかる。

彼らを救わなければいけないのもわかる。

 

ただ、出来ることなら関わらないでいたい。

後悔してからでは遅いのだ。

 

諦めちゃった人はこの世で一番悲しくて、怖い。

 

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