コラム(不定期更新) 怖いネカフェの話

♯36 誰かが見ている

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「腐らずに一生懸命やっていれば、必ずどこかで誰かが見てくれている」

 

これはぼくが最も尊敬する俳優のひとりである笹野高史さんが著作「待機晩成」で書かれていた言葉で、何度もぼくを救ってくれた大切な言葉でもある。

 

先日、この言葉を痛感するような素敵な出来事があった。

 

今から約10年前。知り合いと3人だけで小さな舞台を上演した。

 

劇場ではなく公民館の和室。

客席は50名程度。1日のみの上演。

 

訳あって大々的に宣伝することはできずに、人知れずその公演は行われた。

 

客席は満席で反応も上々だったが、「大々的に宣伝できない」という特異な性質上、終演後もSNSでその件に触れることもあまりできず、当然経歴にも書かれることなく時間が流れた。

 

写真も残っていないので、ぼく自身あまり詳細を思い出すことのない公演だった。

 

そして月日は流れ、去年の話。

 

ある監督のワークショップに参加し、終了後に懇親会が行われた。

 

席に座り、近くにいる初対面の人と互いを探りながらお酒を飲む。盛り上げるときもあれば、そうはならないときもある。そのときは後者であった。

 

監督と話そうにも例のゴマすり集団が監督を取り囲み、ぼくが入り込む隙はない。

帰ろう、と思った。意味のない飲み会はどこまで行っても意味がない。

 

そこで気付く。離れた席からチラチラとぼくを見ている女性がいる。

知り合いかな、と思ったが知らない顔である。何なのか。

 

なんとなくその場の会話を切り上げ、荷物を持って立ち上がる。

 

その女性の隣を通ったときであった。

 

「あの、間違ってたらすいません。昔〇〇さんと一緒に芝居してませんでしたか?」

 

そう声を掛けられた。

 

〇〇さんと芝居を作ったのはそのとき一度しかない。冒頭で説明した舞台である。

 

「え?はい、そうですけど…どうしてご存知なんですか?」

「私、その舞台見てました」

 

まさかのお客様だった。1日だけ1回きりの公演。キャパ50人、約10年前の作品である。

 

ぼくは帰るのを中止して、その女性と別の席に移動して2人で話した。

 

彼女曰く、その舞台で見たぼくがとても魅力的で(彼女の意見である)、ずっと覚えていたとのことである。そして当時、ぼくのアメーバブログからメッセージも送ってくれていたそうだ。(何人かからメッセージをいただき返信したことは覚えている)。

 

彼女はぼくの名前は忘れども、その舞台とぼくの顔を覚えていてくれていた。

 

こんな素敵なことがあるだろうか。

再度言うが、約10年前の舞台である。

 

彼女曰く「哲平さんは見た目が変わっていない」とのことだ。そんなわけはなく実際はちゃんと老いている。それから彼女と当時の話をした。とてもワークショップ後の飲み会とは思えないくらい素敵な時間だった。

 

「頑張っていれば、必ず誰かがどこかで見てくれている」

 

当時のぼくが舞台上で輝いていたのは、当時のぼくが頑張っていたからだ。

今もそう。そして明日も明後日も来年もずっとそうである。

 

まだ見ぬ明るい未来の為に今を一生懸命頑張る。

 

それらは決して無駄にはならない。

 

たとえ評価されるのが10年後だとしても。

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