今、問題視されている俳優ワークショップ。
ぼくが思うその問題点、今回がラストである。
これまでワークショップの存在意義とそこに通う俳優、そしてその俳優が搾取されている金について説明した。
今回は関係性について。
前回書いたようにワークショップの値段は高い。異常だ。朝晩寝ないで働いたお金が一瞬で消し飛ぶ。
すると、俳優はどう考えるか。
言うまでもなく「このチャンスをモノにしよう」と強く思う。
それはつまり「この監督に気に入られよう」である。
ぼくも今まで数え切れないほどのワークショップに通ってきたが、やはり俳優と監督の関係性は変だと思う。監督が神格化されていて、その場にいる全員がその監督に気に入られようと必死なのだ。
その行動の根源に金が関わっているのは否めない。あれだけの大金を叩いたのだから結果を残したい、金額に対するリターンを求めるのは当然の思考だ。
なので皆、監督に好意的な印象をもたれようと作為的に行動してしまう。
すると今度は監督がおかしくなる。
そりゃそうだろう。ワークショップで講師を務める度に参加者から神様のように扱われるのだから。
ワークショップ後の飲み会なんて酷くて見てられない。
誰もがどうにかして監督の隣に座ろうとする。
※以前「ゴマすり」というタイトルで詳しく書いたので興味がある方は読んでほしい。
毎回こうした扱いを受ければ、中には勘違いする監督も出てくるだろう。
こうしたねじれた環境下が昨今報道されている様々な事件を生むのだ。
売れてない俳優のこの混沌とした世界をご理解いただけたであろうか。
無論、正しく信念を持ってワークショップを開催するワークショップ屋さんもいれば、人間として対等に俳優に接する監督もいる。
ただ今回伝えたかったのは、システムとしておかしいことが起こりうる環境になっているということだ。
今回のあれこれの騒ぎで親しくしてる監督と連絡を取った。
「もうワークショップなんてやらなきゃいいんだよ」とその監督は言っていた。
まさしく同感である。
ワークショップに代わる、新しいチャンスの機会を業界全体で考えなければいけないのだ。
芸人さんのネタ見せのように俳優にも均等にお金の掛からないチャンスが定期的にあれば、それに越したことはない。ぼくらの世代では無理でも、次の世代、そのまた次の世代がちゃんと正しく俳優を目指せるような環境を作っていきたいとは常々思っている。
まずは自分が何とかせねば、だが。
以上、3回に渡って昨今の俳優ワークショップ事情について説明した。
業界外の人も多少詳しくなったのではないだろうか。
もし身内で俳優志望がいたら、こういう世界であることは理解してあげてほしい。