コラム(不定期更新) 怖いネカフェの話

♯89 実家帰ってる?って聞かないで!

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「実家帰ってる?」

何気なく、それでいて深い意味もなく会話にしばしば登場するこの質問。

 

実は…かなり苦手である。

というか返答がやや面倒くさい。

 

と、言うのはぼくには実家と呼ぶ場所がないからだ。

生まれ育った街は横浜だが市内で何度も引っ越しをしている。今現在、両親は別々に暮らしており、そのどちらもぼくが育った家じゃないので愛着もない。

 

なので「実家」という言葉が持つ「温かさを具現化するような場所」はぼくにはない。

家族団らんのリビングや、思い出が詰まった自分の部屋などは今は違う人が違う家族と暮らしているはずだし、そもそも家族団らんのワンシーンなどぼくが幼少の頃の数年しか経験していない。

 

なので会話の流れで不意に「実家帰ってる?」と聞かれると少し困るのだ。

「もう実家ないんですよね」とわざわざ説明するのも気が引けるし「帰ってますよ」と嘘をつくのもそれはそれで次の質問が飛んできそうで心苦しい。

 

当然「実家帰ってる?」という問いには言葉通りだけでなく「地元に顔出すことある?」や「親に会ってる?」的なニュアンスが含まれていることは重々承知している。が、だとしてもなかなか答えづらい。

 

ぼくと同じように「実家が存在しない」人は多いと思う。

個々の家庭環境や自分が家を出た後に親が亡くなった方、そういう面々の中にはぼくと同じように「実家帰ってる?」という質問がちょっと苦手な人もいることだろう。無論、親と不仲の人だって多い。

 

そもそも少し過度な言い方をするならば「実家帰ってる?」というのはややパーソナルに触れた質問だと個人的には感じている。

 

細かく指摘するならば、それらは「貴方が子供時代を過ごして、今なお両親が暮らす家が存在してる」という前提条件をクリアした上での問いである。聞く側はそんな前提条件など意識してないだろうが、頭の中を整理するとそういうことだ。

 

何度か会話のリターンを続けて、なんとなくこの人には親の話とか振っても大丈夫だなと微かな確信めいた気持ちがあった上での問いなら問題はない。

しかしそんな確信など上の空。「実家帰ってる?」はあまりにも気軽に使われる。下手すれば「出身どこ?」の次にこの問いが来る。

 

本当に本当のことを言えば、目の前の人が実家に頻繁に帰っていようがなかろうがどうでもいいだろう。聞いたところですぐ忘れる。だからどう答えたとてさほど問題ではないのだろうが、「実家がない人間」からするとこのあまりにも気軽に使われている「実家帰ってる?」という言葉はあまり好きではない。どこか配慮に欠ける不躾な言葉に感じてしまう。

 

皆さんはどう思うだろうか?

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