こんにちは、小野哲平です。
今日は奨学金について書きます。
学費を払うことが困難な学生を援助するための制度、奨学金。
名前を聞いたことがない人はいないでしょう。
全国大学生活協同組合連合会が2019年10月~11月に調査した「第55回学生生活実態調査」によると何らかの奨学金を受給している大学生は30.5%。およそ3人に1人が奨学金を借りていることが判明しています。
同時にこんなデータもあります。
奨学金がからむ自己破産は2012年~2016年度までの5年間で延べ1万5338人。
内訳は本人が8108人(うち保証機関分が475人)で、連帯保証人と保証人が計7230人。
2016年度だけに絞れば本人の自己破産が2009件。
これは奨学金を受けた人の0.05%と言われています。
もちろん直接的な破産原因が奨学金じゃないにせよ、奨学金返済をしていた人間のうち2000人に1人が自己破産をしてる計算になります。
このように奨学金を借りたはいいけど返すのが困難で生活苦に陥っている人が問題になっています。
どうしてそんなことが起きるのか?
それは「奨学金」がどんなものがイマイチ理解できてないままに奨学金を借りる人が多いからです。
奨学金が何であるか、その正体は何なのか。
それがわからない限り、今後も奨学金で苦しむ人はあとを断ちません。
そこで今日は実際に毎月奨学金の返済をしているぼくが、奨学金がどういうものであるか、安易に借りるとどんな問題が待っているのかを丁寧にお教えします。
- 奨学金について知りたい
- 借りようか悩んでいる
- 詳しい人が身内にいない
もし今まさに、奨学金を借りようか悩んでる人がいたらこれを熟読してください。
少し長文になりますがこれを読んでおくのとおかないのでは人生に差が出ます。
人生を変える10分と思い、読みほどいてください。
奨学金は三種類
まず簡単に奨学金の種類を説明します。
奨学金は大きく分けて三つ。
給付型と貸与型。貸与型に無利子と有利子の二種類が含まれています。
- 給付型
- 貸与型(無利子)
- 貸与型(有利子)
給付型とは文字通り返さなくていい奨学金です。受け取るには定められた学力と家計の基準を満たす必要があります。条件についてはシミュレーションがあるのでそちらを参考にしてください。
給付型は返済の必要がないので借金を背負うことはありません。
なので世間一般の奨学金返済とは以下の貸与型を指します。
貸与型(無利子)
ずばり借金です。
無利子なので借りたお金を丸々返す必要があります。
成績が優秀だと借りることができます。通称「第一種」と呼ばれます。
貸与型(有利子)
ずばり借金です。
年利3%を上限とする利息が付きます。
第一種を借りれない学生が借りる奨学金です。こちらは通称「第二種」と呼ばれます。
借りれる額
大学、短大、大学院。
自宅通学か否か、制度を受けた年や希望によって月々振り込まれる額が違います。
先ほど紹介した「第55回学生生活実態調査」によると実際に奨学金をもらっている学生の一ヶ月の受給額は約55,000円程度となっています。
仮に55,000円を4年(48ヶ月)借りると2,640,000円になります。
返済額
たとえば上記のように2,640,000円を借りたときの返済額は、
- 第一種の場合 利息がつかないためこのままの金額(2,640,000円)
- 第二種の場合 利率を年1%で計算すると15年返済で総額は2,856,906円。
第二種は無利子である第一種より約22万円多く返すことになります。
この22万円をどう思いますか?
返済額についてもシミューレーターがあるので自身で計算してみて下さい。
早足になりましたが、奨学金の説明は以上です。
ここからが伝えたいこと。ゆっくりと読んでください。
理解できてないなら借りてはいけない
本記事の結論、一番強く訴えたいのはひとつだけです。
安易に奨学金を借りてはいけない。
もし借りるなら自分自身が完璧に理解するまで勉強しましょう。
親や家族の言う通りにするのではなく、自分自身で学ぶべきです。
正体がわかってない。
奨学金について詳しく説明できる人は周りにいますか?
- お金を借りて進学すること。
- そのお金を将来返すこと。
↑この程度の認識ではあっという間に地獄行きです。
もっと深く、根本から理解しないといけません。
残念ながら奨学金を勧める家族、教師でさえもその仕組みがわかっていないケースがひじょうに多いです。
奨学金の正体がわからずに手を出してしまい、自己破産した人はこれまで10000人以上います。
多額の借金なのに借りるときのハードルは異常に低い。
奨学金とは一体何なのか。
ずはり奨学金とは「未来の自分から借りるお金」です。
それは当たり前なのでは…とたかをくくった方、次もしっかり読んでください。
奨学金の罠
従来の借金は、その人の収入や生活を審査して支払い能力がある場合に貸します。
当然支払い能力がない人間には貸してくれませんし、それ以上の借金を望む場合は不動産などの担保が必要になります。
しかし学生は仕事に就いていないので収入がありません。
【収入がない状態でお金を借りることができる】
それはつまり未来の支払い能力が分からないまま、借金を背負うことができる制度です。
結果、自分の能力以上のお金を借りてしまえば卒業後は返済に苦しむことになります。
当然ヤミ金ではないので、一般的な融資に比べたら金利は低いです。
ですが、第二種では借りた額以上のお金を返さなければいけません。
元金さえままならないのに利息まで…
よく漫画やドラマ、テレビニュースで何百万もの借金を背負って生活がどうにもならない人が登場しますよね。
あれを見てどう思いますか?
自分には関係のない話と思いますか?
実際に300万円近く奨学金を借りているのに、借金をしてる人と自分が無関係だと思わせてしまうのが奨学金の罠です。
消費者金融でお金を借りようが奨学金で借りようが「借金は借金」です。
そして返すのは未来のあなた。
- 支払い能力が確定する前に好きなだけ借りれてしまう。
- よくわからないままに気付いたら多額の借金を背負っている。
- 一生苦しむ選択をわずか18歳に決断させる。
それが『奨学金の正体』です。
「奨学金借りて」は「借金して」
「奨学金を借りて大学に行く」
この言葉がまるで近くのコンビニに買い物に行くかの如く、当たり前に使われているのが日本です。
ぼくが高校三年生のときも友達との会話で頻繁に「奨学金を借りる」が登場していました。
もし今あなたの周りに奨学金を借りてる人がいても、特段驚きはないですよね?
日本では奨学金を借りることは特別なことではなく、選択肢のひとつとして普通に存在しています。
でもこれっておかしいですよ?
もし親から
「奨学金借りて大学行ってくれない?」
と言われてらそれは
「300万円借金してくれない?」
と同じことです。
300万円の借金、返せますか?
日本はお金に関する教育が尋常じゃなく薄いです。
自分の給料からどんな社会保険が引かれているのか知らない会社員も少なくありません。
逆に言うとお金のことを知らないままでも生きていける国です。
それはつまりあなたの家族も知らない可能性がある、ということです。
そして周りと同じように行動するように教育されるのが日本です。
「みんなが奨学金を借りるから私も!」と、無思考で借りるととんでもないことになります。
借りることへのハードルが低く盲目になりやすいですが、奨学金は単なる「借金」です。
返済を滞納すると、最終的に給与などの財産を差し押さえられる可能性もあります。
奨学金の怖い話
実際に奨学金返済に苦しむ人の話をまとめました。
人の数だけ物語はあります。先駆者の話を聞くのは効果的な学びです。
ぼくの場合
ぼくはまず第一種を借りました。
マネーリテラシーが著しく低かったぼくは進学時に親から「奨学金借りて」と言われたので何の疑いもなく手続きをしました。
学校の先生も「お前の成績なら第一種借りれるぞ」と背中を押してくれました。
面接をして無事に合格。
あっさりと250万の借金を背負いました。
大学一年のある日。
親から言われました。
「第二種も借りてくれない?」
ここで気付くべきだったのですがマネーリテラシーが著しく低かったぼくは何の疑いもなく第二種も借りました。
お金を借りる事への自覚がありませんでした。
あっという間に(第一種と合わせて)500万円の借金です。
大学を4年で卒業したぼくは歌舞伎役者の付き人になりました。
500万の借金を背負い、不安定な職業で社会人スタートです。
月々の返済額は約21,000円。
正社員に比べると低い給料でしたが、それでもお金をやりくりして払えていました。
当然ながら貯金はできません。
付き人を辞めてアルバイトしながら役者をする生活になると、もう無理です。
引き落とし日に口座にお金がない月が増えてきました。
奨学金と言えども借金なので、催促の電話は掛かってきます。
何度か遅れて支払ってましたが、いよいよどうにもなりません。
支払いをする為だけに働いてまともに食べることができない日々が続きました。
次第にどうして大学なんて行ったんだろう、と思い詰めるようになりました。
大学は楽しかったし友達も出来たけど、
500万の十字架を背負ってでも行くべきだったのかは今でも悩んでいます。
その後は返済猶予期間をもらうなどして生活を立て直しました。
今のところは月々の返済も問題なくできています。
体験談
と検索すると、様々な人の地獄が出てきます。
中には自業自得の方もいますが、
- 会社でのストレスで働けなくなった
- 病気になった
- 仕事が見つからない
など、真面目に働いていても返済に困窮してるケースもあります。
幾つか記事をまとめたのでご覧下さい。
このように奨学金には人生を滅ぼすチカラがあります。
どうして大学に行くのか
ここまでお読みになった方は奨学金の正体について理解が深まったはず。
しかしそうだと分かっていても大学の学費は高いので、ほとんどの家庭にとっては奨学金なしで大学に通うことは困難です。
やはり奨学金しか…
でもここでもう一度考えてください。
そもそも「どうして大学に行くのか」。
昔は「頭の良い人間が大学に行く」のが常識でした。
しかし今は聞いたことのないような大学も増えて、望めば誰でも大学に行けます。
奨学金を借りるのが当たり前のように、大学行くのが当たり前と無思考で考える風潮さえあります。
彼らが大学に行く理由は「大卒という肩書き」がほしいから。
しかし今は「大卒」という肩書きがあればどうにか生きていける時代ではありません。
人生を左右するほどの借金を背負ってまでそこに学びたいものがあるのか、
自らの意志で進学するのか、
自分の頭で考えなければいけません。
なんとなくで通うにはあまりにも背負うものが大きすぎます。
借金を背負うという自覚を持て
今回は奨学金の正体について説明しました。
繰り返しますが奨学金は借金です。
月々1万振り込まれるのと、月々1万返すのは同じ額でも重みが違います。
奨学金そのものはどちらかというと「善」です。
この制度に命を救われた若者も沢山いることでしょう。
しかしその一方で、味方だったはずの奨学金に人生を振り回されてしまう人がいるのも事実です。
奨学金を未来の自分への投資にするか、人生を地獄にする借金にするか、
それはあなた次第。
確実に言えるのは、
奨学金が多額の借金であると自覚してから借りなければいけないということです。
よく仕組みを知らなかったでは済まされません。
借金は借金です。
そこに綺麗も汚いもありません。
本当に必要か、自分の頭で考えて、
自分の意志で借りて、自分のチカラで返していきましょう!