コラム(不定期更新) 怖いネカフェの話

♯69 教習所

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ペーパードライバーである。

 

免許を取得してから一度も運転してない生粋のペーパードライバー、もはやペーパードライバーの完全体と言っても過言ではない。

という書き出しで始まった『運転』というコラムはこちら

 

さて、今回は自動車教習所での思い出である。

以前も書いたがぼくは真面目な生徒だったので座学も一番前で熱心に聞いて、若干教官が引くくらいであった。

 

仮免を経て路上教習。その科目のひとつに「高速教習」があった。

言うまでもなく高速道路を走る教習である。文字通り免許取得で誰もが通る道。

 

通常の路上教習では教官と生徒は一対一だが「高速教習」は教官1人に生徒が3人。ずっと1人が運転するのも大変だし、サービスエリアなど良きタイミングで運転者が変わって3人一気に教育しちゃおうというシステムである。

 

で、ぼくの運転中にちょっとした出来事が起きた。

煽られたのである。The・AORI。

 

とは言いつつも近年問題になってる前方の車が減速・加速を繰り返すゴミクズ運転ではなく、後ろからクラクションを「パパパ!」と何度も鳴らされた。ちゃんと車間距離も保って走行していたので只の煽りである。

 

教官曰く、教習車を狙って煽ってくるドライバーは多いそうだ。

 

「パパパ!」とクラクションを鳴らされ煽られている正にそのとき教官が言った言葉が忘れられない。

 

「皆さんはこういうバカなドライバーにならないでくださいね」

 

そして、そのあとに少し悲しそうな顔をしていた、気がした。運転中だったのであくまで予測だ。

 

でも教官の立場で考えれば悲しいのも当然である。

煽り運転をするようなドライバーを量産するために教習所で働いているわけではないだろう。

事故を起こす全てのドライバーは、かつては誰かの教え子だったのだ。

 

無論、自動車教習所の教官と受講者の間にそれほど深い絆があるとは思わない。互いに何の思い入れもないのが通常だろう。ぼくだって教官を誰一人覚えてないし、誰もぼくを覚えてないと思う。

 

しかし運転者教育に携わる真摯な人間であれば昨今の煽り運転の事件には心を痛めているのではないだろうか、なんてことを思う。

 

そのぼくたちを煽った車はそのままどこかに消えていった。

今なら後部座席にいた生徒がカメラを回して証拠にしていたに違いない。

 

その後は何の問題もなく、高速教習は終わった。正直煽られたときは怖かったけど、ゴミクズドライバーを間近で見れたので教習としては成功だったと思う。

 

見ず知らずの他人に哀れと思われてまで煽りを続ける運転者の狂気、未だに微塵も理解できない。

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