コラム(不定期更新) 怖いネカフェの話

♯27 食べ放題

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数年ぶりに焼肉の食べ放題に行ってきた。

 

「焼肉食べ放題」。まるで楽園のような響きだ。どれだけ食べても同じ料金。好きなのだけ食べ続けてもいいし、色んな肉を少しずつ楽しんでもよい。サブスクの元祖である。

 

誰もが考えるのは「元を取ること」。

食べ放題料金よりも勝る金額の量を食べないと損した気分になる。

 

子供の頃、家族で焼肉食べ放題によく行った。終盤、お腹いっぱいで苦しくなると母親が必ず「お米はいいからお肉食べなさい」と言った。米よりも肉のが値段が高いから、という理由なのは十分わかるが、「何で食べ放題なのに食べるもん指定されなきゃいけないんだ」と幼いぼくはずっと思っていた。

 

声を大にして言いたい。

元を取るよりも満足度を高める方が絶対大切だ。より高いものを食べさせるよりも、本人が食べたいものを満足するまで食べさせるのが愛である。ワカメスープが好きならずっとワカメスープでもいいじゃないか。それが正しい「食べ放題」だ。

 

話を戻そう。

数年ぶりに焼肉食べ放題に行ったぼくは驚愕した。

 

全然…食べられないのである。昔はダイソンの掃除機くらい浴びるほど肉を貪り食っていたのに、3皿食べたところで若干の満腹感が漂ってくる。

 

もしかしてこれは。

 

一緒に行った同い年の友人も自分の身体の違和感に気付いていた。

 

もしかしてこれは…

 

30代半ば、気付けば30歳に戻るより40歳に手を伸ばす方が近い距離に立っている。

 

まいったな、これが老いってやつか。なんてニヒルに言ってみても食欲は蘇らない。すぐに満腹になってしまったのである。

 

しかし現実を直視できない愚かなぼくらは限界を超えて食べ続け、もはや美味しいなんて感想は消えさり只々気持ち悪くなる為だけに食糧を飲み込む無益な間を過ごした。

 

帰り道、本当に吐きそうだった。飲み過ぎじゃなくて食べ過ぎで吐くのは記憶にない。「満足度を高めるのが大切!」と言っておきながら蓋を開ければこのザマである。なんて愚かなのだろう。

 

もう、沢山食べれる身体ではないということを痛感した。そういえば大盛り無料の定食屋で大盛りを頼まなくなったし、「誰か食べんねん」とずっと思ってた牛丼屋のミニ盛りを頼むことも多々ある。

 

認めざるを得ない。

さらばあの頃、さらば若き肉体。

 

だがしかし!

ぼくは常にピンチをチャンスに変えることに定評のある男である(自社調べ)。

 

量を楽しめなくなったならば質を楽しめばいい。これからはグルメハンターになるのだ。

 

10年くらい前、知り合いの女性にこんなことを言われた。

「哲平ちゃんさぁ〜、芝居芝居って一つのことに夢中になるのもわかるけど、女のコとかグルメとか他のことにも興味持ったら?」

 

伏線回収まで随分時間がかかったが今こそグルメに興味を持つときだ!!

少食になった自分を生かしてより美味しいものを同じ値段で食す。

ぼくは老いたのではない、コスパがいい人間になったのだ。

 

ずっと食に関心がなかったが、これからは少しずつグルメになろうと思わせてくれた焼肉食べ放題であった。(ちなみに女のコには元々興味はある。相手にされないだけだ。)

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