コラム(不定期更新) 怖いネカフェの話

♯6 オレオレ詐欺

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もう数年前の話になるが、祖母がオレオレ詐欺に引っ掛かったことがある。

結果としては未遂で終わりお金を取られることはなかったのだが、完全に祖母は騙されていた。

 

その日の昼、バイト先で働いていたぼくの携帯電話に祖母(自宅電話)から着信が入った。仕事中は携帯電話を持ち歩けないので着信があったことに気付いたのは休憩時間になってからである。

 

その不在着信は休憩に入る数分前に掛かってきていた。

 

念の為祖母には電話番号を教えているが、これまで掛かってきたことは一度もない。祖母の家には母の弟、つまり叔父が同居しているので電話帳を見て叔父がぼくに電話をしている可能性もある。

 

どちらにせよ用事なく着信があることは考えられない。何かがあったということだ。

すぐさま折り返したかったが、そのときの休憩は短く、電話をするような時間はなかった。

 

今思えば有事なのだから律儀に休憩時間を守る必要などなかったのだが、とにかくぼくは母にメールを送り、仕事に戻った。

 

「お婆ちゃんから電話があったんだけど、今忙しいからそっちから用件聞いてくれない?」

 

 

そして次の休憩。母からの返信。

「哲平を名乗る人から電話があり、お金を用意してたそうです」

 

まさに絵に書いたようなオレオレ詐欺。

その数時間後、連絡を聞きつけ仕事から帰宅した叔父から詳しい話を聞いた。

 

事の顛末はこうだ。

 

昼間。一人で家にいた祖母にぼくを名乗る男から電話が掛かってくる。

 

詳しい内容は聞かなかったが、とにかく偽物のぼくが何か失敗をしでかし祖母にお金を無心したらしい。

 

出歩くこともままならない祖母だが手元に幾らかの金はあったよう。しかし用意して待ってても自宅にぼくは現れない。

 

 

そこでぼくの携帯電話に電話をしてみた。

すぐにぼくの連絡を聞き付けた母から祖母に連絡が入り、詐欺判明に至る。

 

自宅に偽物のぼくの仲間(詐欺組織)が現れなかった理由は今ひとつ解明できてないが、もし現れていたら祖母はお金を渡していたことだろう。

 

涙ぐましいのは、偽物のぼくが「(祖母から)お金をもらうことを家族には内緒にしてほしい」と言ったのを祖母は健気に守り、母には「哲平が来るけど、哲平と約束したから来る理由は言えない」と何度も言い張り、お金を渡すことは最後まで明言しなかったらしい。

 

つまりそれが詐欺であることを説明して、祖母が理解するまでに時間が掛かったというわけだ。

 

この件でわかったことが3つある。

 

ひとつはテレビやドラマでしか見掛けない詐欺事件が身の回りで何の前触れなしに起きること。

 

ふたつめは、自分の身内が簡単に引っ掛かること。

 

そしてみっつ目。どれだけ会っていなくても祖母はぼくが困ったらお金を用意してくれること。

オレオレ詐欺を通じて祖母の愛情を痛烈に感じた事件だった。

 

ちなみに完全に詐欺に騙されて、騙されたことも家族にバレバレの祖母はその事件から1ヶ月後に「実は最初からオレオレ詐欺だと気付いていた」と、可愛らしい見栄を張っていた。

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