こんにちは、小野哲平です。
2020年6月に上演予定だったトムランド公演「小さな怪物」、5月に早々と公演中止を決断して今は7月。上演予定日も一ヶ月を過ぎました。
咄嗟の判断の中止ではなかったにせよ、やはり時間が経つと見えてくるものも色々あるわけで、今日はぼくが今思っていることをつらつら書きます。
まず純粋に「中止にしてよかった」と考えています。
厳密に言うと「小さな怪物」の上演期間は緊急事態宣言が取り止めになっていたので、コロナ対策さえすれば上演することは可能でした。
しかし以前も書いたように安全に上演するためには客席を減らしたり、稽古場でも距離を取ったりと色々と正しい対策をして、という話になります。
結論から言うと、そこに挑戦しようとは思えませんでした。
なので中止です。
そこまでのパワーはぼくにはありません。
中止になった要因は他にもあるので、そちらは以前書いたトムランド公演「小さな怪物」公演中止のお知らせをお読みください。
今日書きたいのは「それでも演劇を続ける人たちって凄いな」という話です。
現在、緊急事態宣言が解除されたこともあり、大なり小なり演劇活動が再開されています。
新宿での舞台クラスターの件は非常に残念でしたが、基本的には各団体コロナ対策をしていつ感染するかもわからない恐怖と戦いながら活動しているはずです。
大きい舞台、俗にいう商業演劇は楽屋も劇場も広いので人間同士の距離を保つことが可能です。
でも小劇場。
出演したことのある方ならわかると思いますが、小劇場でコロナ対策を完璧にするのはとても難しいです。
例えばぼくらが上演しようとしてた北池袋新生館シアター。
出演者10人、どう頑張っても楽屋は密になります。
そもそもの楽屋スペースが狭いので、待機している役者の椅子を離すのも限界があります。
しかし他に待機場所はありません。
楽屋以外で客席から見えないところで待機するなら舞台袖か通路に立っているしかありません。
それだって役者の動線です。
なので表向きには完璧な対策を装っていても実際はかぎりなく不可能に近いということです。
基本的に舞台上より楽屋が広い劇場は少ないです。
なので最近上演された舞台でも
- 劇場規模
- 出演者の数
を見るだけで「これは守れてないのでは」と思う舞台が今でもチラホラあるのは事実です。
その場合は相当な工夫をして距離を保っているか、ある程度諦めているかのどちらかでしょう。
いずれにせよぼくがとやかく言うことではないし、分かってる人は分かってると思います。
そして客席。
ひとつ空きで並べて従来の半数。
トータルキャパが半分になれば推定売上も半分です。
さらに換気が難しい密閉空間に足を運ぶことに抵抗のある方もいることでしょう。
売上が半分になったとしても、作品の質は変えられません。
稽古期間もそれに掛かる費用も。
なので不安定な環境で売上も見込めない今、演劇に取り組む人はスゴいです。
やや皮肉っぽく聞こえる節はありますが、ぼくは純粋にそのバイタリティに驚嘆してます。
今は「作品の質を向上させる」のと同じくらいのウェイトで「コロナ対策」がのしかかってきます。
今まで一本の柱に集中すればよかったものが今は完全に二本の柱です。
その二つに同時集中することは、ぼくには到底できないです。
売上が半分で出演者に満足なギャラを払えないまま、観客に一定のリスクを与えても舞台を上演するまでの情熱や度胸がぼくにはありません。
もう少し言うとそこまでしてやる理由がぼくの中で見つかりません。
正直この状況でもぼくが舞台をやれば役者は集まるし、お客様も来てくれます。
だからこそ、そこには徹底的な責任を持たなきゃいけません。
作品にも、出演者やスタッフにも、そして来場されるお客様にも、全てにおいて真摯に向き合う覚悟がなければいけません。
その全てに自分の専門領域でない「コロナ対策」がある以上、ぼくは戦えないです。
だから今小劇場で舞台を上演してる人はとんでもない行動力を持ってると思います。
マジですごい
リスクを負った上で、それでも作品を創り上げる情熱が反対の方向に転げ落ちていかないように、来場される皆様も自己管理を徹底して足を運んでくだされば、少しづつ小劇場界の活動が活発になっていきます。
今活動されている方々の多くは勇気ある演劇人です。
数多くの挑戦が無事に成功することを木陰からそっと応援してます。
ぼくはまだ充電中。
いずれまた。