こんにちは、小野哲平です。
今日は2017年11月に上演したぼくの作品「儚人~はかなびと~」について書きます。
この作品はトムランドで作った初めての舞台作品です。
なのでぼくにとっては勿論、トムランドにとっても大変思い入れのある作品です。
二年経った今も尚、本番を見てくださった方に「儚人、良かったよ」と言ってもらえるほどの作品で、トムランドのアイコンのようなものです。
ちなみにこのブログのファビコンも儚人になっています。
それほどまでに大切な作品です。
上演台本が電子書籍で発売中ですが、今日はそれを購入していない方の為にあらすじを少しだけご紹介します。
登場人物
本作品の登場人物は7名。
竹本 … 芝居をやめた男
緒方 … 劇作家
桃子 … 結婚を控えた女
ラッキー斎藤 … カリスマ恋愛伝道師
アルプスおじさん … 都市伝説
永井 … 兄の人生を生きる男
大妙寺 … 何でも屋
この7人の人生が、本人達の意図せぬところで交わり、それぞれが知らずに影響を受けて物語は進んでいきます。
群像劇だね
それぞれの配役はこちら。
竹本 → 吉木遼
緒方 → 大楽聡士
桃子 → 園田与恵
ラッキー斎藤 → 佐藤悠樹(さとこ)
アルプスおじさん → 野々宮楓
永井 → 戸村健太郎
大妙寺 → 小野哲平
台本はすべて当て書き。つまり執筆段階からその役者がその役を演じることを想定して台詞や展開を考えました。
なので役があって役者がいるのではなく、まず最初にその人間(役者)が存在していることでそのキャラクターが生まれたわけです。
参考にした作品
執筆前に参考にしたのは内田けんじ監督の運命じゃない人。
ストーリーもジャンルも全く違いますが、○○が××してるときに(実は)△△は××していた、みたいな脚本の妙がある作品で、ぼくはこのスタイルが大好きです。
超面白いよ!
「儚人~はかなびと~」あらすじ
「儚人~はかなびと~」は全部で14のシーンから作られています。
観客には分かりませんが実は各シーンごとにタイトルがついています。
ぼくの作品は毎回そうだよ
さっそく読んでいきましょう!!
#1「意図せぬ別れ」
桃子が恋人の永井に呼び出され公園に行くと、そこには見ず知らずの男性がいた。
その男性は言葉を上手く話せず、行動も幼い。見るからに知的障害者である。
戸惑う桃子に永井はその男性を紹介した。その男性は永井の兄だという。
兄貴と呼ばれたその男は自分のことを「マモルくん」と言った。
動揺する桃子。桃子は永井に障害を持った兄がいることを知っていた。
知っていたが、いざ目の前にすると動揺を隠せなかった。
永井はそんな桃子に構わず、自分の話を始める。
桃子はそのとき、プロポーズをされると思っていた。
が、永井の口から出た言葉はそれとは反対の言葉だった。
「桃子ちゃん、やっぱ結婚はできないよ」
言葉を失う桃子。
そして永井は障害者の兄を持つ人間と結婚することが、どれだけ大変なことなのかを桃子に説明し始める。
愛があれば乗り越えられるという桃子に対し、永井は「何も分かっていない!」と声を荒げてしまう。
子供ではなく大人の腕力を持った障害者の面倒を見るということ、それがどれだけ精神を圧迫し、人生を困難にするのか、永井は分かっていた。だからこそ、桃子を自分の人生に巻き込むことは出来ないと判断した。
苛立ちをぶつける永井に何も言えず、もうこの関係がどうにもならないことを悟った桃子はそっとその場を去る。
「マモルくん、じゃあね」
桃子がいなくなった公園。静寂。
すると先ほどまで障害者だったマモルがハキハキと言葉を発する。
彼は永井の兄ではなく、何でも屋の大妙寺だったのだ。
#2「刺してくれ」
竹本の部屋に緒方が遊びに来ている。
二人は旧知の仲であり、かつて同じ劇団で芝居をしていた間柄だった。
親友である竹本に自分の妹が結婚することを嬉しそうに語る緒方。
妹から呼ばれる「お兄ちゃん」と、妹が結婚するであろう義理の弟から呼ばれる「お義兄さん」。
この「ちゃん」と「さん」の間に妹の人生が詰まっていることを竹本に熱弁する。
緒方の話が一段落すると、竹本は緒方に金を渡す。
それは特別なことではなく、日常の一部として金を渡す。
緒方は劇団の運営費を社会人である竹本から借りていたのだった。
申し訳なさそうな緒方に「気にするな」と竹本。
感謝した緒方は竹本に「劇団に戻ってきたいのか?」と聞いてしまう。
激怒する竹本。自分がどんな気持ちで芝居をやめたのか分かっているのか。
怒られた緒方は逃げるようにヘラヘラ笑って部屋を飛び出す。
ここまでが日常の一部なのだ。
緒方がいなくなり、自分の気持ちを汲み取れない緒方に静かな苛立ちを感じている竹本。
そこに見知らぬ来訪者が現れる。
#3「幸運のカリスマ」
超人気DJのラッキー斎藤はカリスマ恋愛伝道師。
今日も賑やかに彼の番組が始まる。
いつものように軽快な口調で次々にリスナーから寄せられる恋愛相談に答えていくラッキー。
するとこんなメールが届く。
付き合っていた男性と結婚直前になって別れてしまいました。
彼は今後の人生で家族の面倒を見なければいけなくて、
それに私の人生を巻き込みたくないという理由で別れを告げられました。
私は、今でも彼のことが好きなのですが、彼の家族と一緒に暮らしていけるのかと聞かれると正直自信がありません。自分がどうすればいいのかも、どうなりたいのかも分かりません。ラッキーさんはどう思いますか?
永井に別れを告げられた桃子からのメールである。
カリスマ伝道師は軽快に、そして的確に桃子からの相談に答えるのであった。
#4「言えない」
妹の結婚を心から楽しみにしている兄(緒方)に、桃子は別れてしまったことが言えないでいる。
「お兄ちゃんも、お義兄さんも、お前の味方だからな」
そう電話で言われた桃子は何も言えず、困ってしまう。
人手不足の緒方のバイト先に何でも屋の大妙寺が助っ人で働きに来る。
知り合う二人。
次もよろしく!と去る緒方の後ろには永井。
偶然再会した永井と大妙寺。
大妙寺は、恋人を別れたことを後悔しているのか永井に聞くのであった。
「いいんですか、それで」
#5「ありがとう」
竹本の部屋に現れるラッキー斎藤。
実はラッキーは緒方の劇団の劇団員であり、竹本の後輩でもあった。
雑談のあと、ラッキーは竹本にお願いをする。
「・・・緒方さんにお金渡すのやめてもらえますか?」
「・・・知ってたのか。」
応援の形としてお金を出すことの何が悪いと主張する竹本にラッキーは怒りを抑えきれず核心に触れる言葉を言い放つ。
「お金を出すことで演劇と繋がってると思ってるんですか?」
怒る竹本。ラッキーはそのまま部屋を出る。
続いて現れたのは緒方。
竹本は緒方からも、もうお金はいらないと言われてしまう。
言葉を失う竹本に緒方はコンビニにおける動物戦争の説明を熱く始めるのであった。
#6「アルプス襲来」
街を徘徊してアルプス一万尺をしてくれる相手を探してるおじさん、通称アルプスおじさんに遭遇する桃子。
アルプスおじさんとアルプス一万尺をすると気がおかしくなるという都市伝説を気にせずに桃子はアルプス一万尺をしようとする。
そんな優しい桃子に惹かれるアルプス。
そこに現れたのは緒方。
桃子が緒方を「兄です」と紹介したことにより、アルプスは緒方に、
「お兄さん、はじめまして」と挨拶をしてしまう。
アルプスが妹の結婚相手と勘違いした緒方は兄として、アルプスに一生懸命妹の幸せを頼むのであった。
続きは書籍で!
ここまでが前半から中盤です。
ここでようやく全キャラクターの紹介が終わって、次から更にそれぞれが交錯し合いエンディングに向かっていきます。
登場人物が抱える悩み、散らばっていたパズルのピースが少しずつ埋まっていきます。
続きは是非!電子書籍でお読みください。
上演台本をそのまま販売しています!
上で説明した各シーンのあらすじも実は途中までしか書いていません!!
もっと細かく、微細な人間関係があります。
この物語がどうして今も語り継がれているのか、
その答えは貴方の目で確かめてください。
実は舞台映像見れます
と、言いつつも実は舞台映像がトムランドちゃんねるで公開されています。
しかしこれは記録用のゲネプロの映像です。
なのでそこまで楽しめません。はい。
一応最後まで公開されているので、時間ある方はご覧になってください。
ただぼくはこの映像よりは上演台本の方が作品が伝わるかなぁ…と思ったりしてます。
あくまで記録用だからねぇ…
ないよりはいいじゃないですか
見てくれー!!!!