こんにちは、小野哲平です。
今日はぼくが初めてドラマに出させてもらったときの話。
その作品は2009年にテレビ朝日で放送された時代劇「だましゑ歌麿」。
高橋克彦による時代小説のドラマ化で、簡単に説明すると相棒の時代劇版のような作品。
主演は水谷豊さん。その相棒に中村芝翫さん(当時橋之助)という配役でした。
江戸の町を高波が襲った夜、当代の人気絵師・喜多川歌麿の恋女房が惨殺された。歌麿の幕府風刺を憎む上からの圧力に抗いつつ、事件の真相を追う南町奉行所の同心・仙波。仙波の前に、やがて明らかとなる黒幕の正体と、歌麿のもう一つの顔とは!? 時代はまさに「鬼平」こと長谷川平蔵が火附盗賊改(ひつけとうぞくあらため)の重職を担っていた当時で、鬼平もたっぷり登場します。浮世絵を愛する著者が、江戸の町が見えるように生き生きと語る、恋あり仁義ありの傑作時代ミステリー! 引用:Amazon商品ページ
一作目の放送が2009年。その後四作目まで続編が放送されました。
- だましゑ歌麿 2009年
- だましゑ歌麿Ⅱ 2012年
- だましゑ歌麿Ⅲ 2013年
- だましゑ歌麿Ⅳ 2014年
ぼくが関わっていたのは2009年の一作目です。
芝翫さんの付き人として撮影現場に同行していました。
初めての長期撮影
撮影は京都の松竹撮影所。
オープンセットで江戸の町並みが再現されています。
撮影期間は丸一ヶ月で、ぼくは四条大宮駅前のホテルを用意してもらいました。
都内での映画撮影現場には同行経験がありましたが、丸一ヶ月泊まりで撮影は初めて。
当時23歳のぼくは緊張しつつも、とてもワクワクしていました。
事前にもらった台本を読むと
…ほぼ芝翫さんが主役。
冒頭からずーっと出続けています。
朝がとにかく早い
とにかく撮影は朝が早い!!
まれに入り時間がゆっくりの日がありましたが、基本は朝イチから撮影。
ぼくは毎朝6時にホテルを出て嵐電(嵐山本線)で気絶しながら撮影所に向かっていました。
気絶してたのを監督に隠し撮りされました(笑)
仕事内容は歌舞伎と変わりません。
楽屋掃除して食事の用意して、飲み物やら必要なものを持って現場に同行です。
ツラかったのは座れないこと。
俳優部には椅子が用意されていますが付き人にはありません。
歌舞伎なら廊下に椅子を用意して座ることができますが、撮影は屋外です。
撮影の間じゅう、毎日5~6時間立ってました。
長いときは朝から夜まで!
足が痛すぎてその場にしゃがんだりしてました。
気を抜くと立ったまま寝てしまうので、腕をつねったり足を叩いたりして寝ないようにしてました。
それでも瞬間的に意識飛ぶことも多々あります。
懐かしいなぁ~
見るもの全てが夢のよう
ぼくは歌舞伎役者ではなく映像に出演できる俳優になりたかったので、
ドラマ撮影の世界は夢のように楽しかったです。
現場ではずっと芝翫さんの近くにいるので出演者とも顔馴染みになり、水谷さん始め、皆様にもよくしていただきました。
3つのドラマが同時進行
そのとき松竹京都撮影所では「だましゑ歌麿」以外に2本のドラマが撮影中でした。
- 鬼平犯科帳
- 必殺仕事人2009
別の作品でもメイク室は同じ場所なので、毎朝沢山の俳優さんにお会いします。
- 藤田まことさん
- 東山紀之さん
- TOKIOの松岡さん
- 元KAT-TUNの田中さん
- 尾美としのりさん
- 伊東四朗さん など
ぼくは初めてお会いする方ばかりですが、芝翫さんはめちゃくちゃ顔が広い方で、どなたにお会いしても「お!橋之助さーん!」と声を掛けられて親しげに話していました。
みんな知り合いなんだ!すげー!!と思ってました。
緊張感漂う歌舞伎の空気とは違って撮影現場は終始リラックスした雰囲気でした。
当然ながら播磨屋の旦那(中村吉右衛門さん、鬼平)もいらしてて、楽屋前を通るときはぼくも芝翫さんも背筋をピシッとして歌舞伎モードで通ってました(笑)
楽屋にいなくても緊張する…
初出演
芝翫さんはこれまでも幾度となく撮影所で仕事したことがあるのでスタッフさんにもすごい人気でした。
撮影初日から昔馴染みのスタッフさんが「若旦那!若旦那!!」と集まってくるくらいです。
どこでも人気者や…
そんなある日、芝翫さんがぼくのこと(俳優志望で頑張ってる旨)をスタッフさんに紹介すると、制作統括をしてる方からこんなことを言われました。
「じゃあ、出てみる?」
「…え?」
あっという間に出演させていただけることになりました。
初めてのドラマ出演。
どこにあるのかわからずに長い間ずっと探してたモノを「はい!」といきなり目の前に差し出されたような気持ちでした。
あ…こんな感じで決まるんだ…
芝翫さんが「よかったな!哲平!」とすごく喜んでくださったのを覚えてます。
当たり前にしなさい
初めての撮影は緊張で頭が真っ白。
何もできないままに終わってしまい、プロと呼ばれる人たちがいかに難しいことを簡単にやってみせているかを痛感しました。
い、今ならできるけどね!(負け惜しみ)
その日の夜、芝翫さんがお寿司に連れてってくれました。
出演を祝福すると共に「これ(出演する日々)を当たり前にしなきゃダメだぞ」と有難いお言葉を頂きました。
初めて付き人ではなく、俳優志望として言葉を交わしてもらえた気がしました。
出会ってから2年弱の月日が流れていました。
驚愕
衝撃的だったエピソードをひとつ。
ドラマの終盤。
罠に遭い山の中で敵に囲まれた芝翫さんが5~7人(正確な人数は忘れました)を相手に立ち回りをする見せ場があります。
山で走り回りながらひとりずつ斬っていき、最終的にピンチになり間一髪で仲間が駆けつける、というシーンです。
ここで驚いた出来事がありました。
最初に殺陣師の方が芝翫さんに立ち回りの段取りを実際にやってみせます。
「ここでひとり斬って、こっち側に逃げます。そうするとここから斬りかかってくるので~」
山の中を移動しながらの説明です。
これ大掛かりな立ち回りだなぁ~
時間掛かりそうだけどワクワクするなぁ~
と見ていたら、一度説明を受けた芝翫さんがこう言いました。
「はい、わかりました」
そのままドライ(カメラなしリハーサル)です。
え!もうドライ!?
そしたら芝翫さん…覚えてるんですよ…
その立ち回り…
一回説明受けただけで…
うそぉん…
これ、本当なんです。実話なんです。
超超超超ビックリしました。
そのままテストして本番。
自分が凄いと思ってた人が実はもっともっと凄い人だった、という唖然な体験でした。
( ´゚д゚)アングリ…
↑ぼくリアルにこんな顔してました。
忘れられないドラマ
今回の話は以上です。いかがでしたでしょうか?
やはり長年思い描いていた夢が叶う瞬間というのは忘れがたいもので、
この作品及び撮影期間の出来事は鮮明に覚えています。
当時のぼくは録画環境がなかったのでオンエアは友人に頼んでBlu-rayにしてもらいました。
だましゑ歌麿、大切な作品です。
たまにCSで再放送してるみたいなので発見したら見てください!
台本は宝物です!一生保存!!