こんにちは、小野哲平です。
以前「舞台を見に来る予定だった人に当日いきなり連絡無しでドタキャンされた話」を書きました。
思い出す度に腹立たしいよ!
でもこれはあくまでもお客様サイドの話。
なのでお客様にドタキャンされても舞台自体は問題なく始まります。
では、その舞台の上にいるはずの出演者が来なかったらどうなるのか?
考えたことありますか?
もしくは経験したことありますか??
今日はこの本番当日に舞台出演者が来なかったらどうなるのか、について詳しく書きます。
主な理由は体調不良
舞台に出演する役者が本番当日に来ないのは、まずあり得ません。
どれだけ身体の具合が悪くても絶対に来る。
それは誰かに強制されることではなく、舞台に立つ者の覚悟です。
自分が来ないだけでどれだけの人に迷惑が掛かるか、自分目当てで来てくれるお客様だけでなく、別の役者のお客様、その作品自体を楽しみにしてくれているお客様、関係者、全てに迷惑が掛かります。
出演者・関係者で費やした全ての時間が無駄になります。
なのでまずどんな状況にあろうとも絶対に来る、それが舞台に立つということです。
ただそれでも人間の身体は時に制御が効かなくなることがあります。
ぼく自身が経験したケースも含めて幾つか紹介します。
公演中止からの代役
観劇好きなら幾つかのケースをご存知かと思いますが、特に大きなニュースになったのは2013年に上演された舞台「おのれナポレオン」
作・演出を三谷幸喜さん、それに同じく演出家の野田秀樹さんが主演するという演劇界の超豪華コラボ作品。
野田秀樹さん以外の出演者も天海祐希さん、山本耕史さん、浅利陽介さん、今井朋彦さん、内野聖陽さんととんでもなく豪華な顔ぶれでした。
しかしそれ以上にこの舞台が注目されたのはこれがあったから。
初日から問題無く出演していた天海祐希さんが心筋梗塞でドクターストップとなったのです。
公演中止が発表されたのはまさに本番が予定されていた日のこと。
それこそ本番当日降板です。
心筋梗塞じゃ無理や…
千穐楽まであと数日での出来事でした。
が、この公演が未だに語りぐさになっているのには更なる理由があります。
それが…代役!!!!
なんとこの公演は本番当日の夜と翌日だけを公演中止にして、翌々日からは代役を立てて上演したのです。
その代役を務めたのが宮沢りえさん。
時間軸で説明すると
5月9日 昼夜公演中止
5月10日 夜公演から代役で公演再開
宮沢りえさんが稽古を開始したのは8日からなので、わずか2日で本番に臨みました。
演劇人には有名な話だね!
代役で上演
公演中止を経て代役での上演というパターンの他に、公演中止せずに代役で上演というパターンもあります。
面白いところでは2018年に上演された舞台「江戸は燃えているか」
TOKIOの松岡さんと中村獅童さんの時代劇で作・演出が三谷幸喜さん。
また三谷さんだぁぁぁぁぁー!!!
この作品に出演していた松岡茉優さんが体調不良でダウン。
昼公演終了後にダウンとなり、なんと夜公演を演出の三谷幸喜さんが代役として演じるという出来事がありました。
三谷氏が開演前に「松岡さんの具合がよくありません。(代役の)人が見当たらないので、代わりに私がやります」と自分が代役を務めることになった経緯を説明した。松岡は中村獅童(45)演じる勝海舟の長女ゆめ役。三谷氏は本番では、台本を手に持ちながら黒子姿で舞台に立った。引用:日刊スポーツ
勝海舟の娘・ゆめ役の松岡茉優ちゃんが昼の部終演後ダウン→点滴の為、休演も検討した結果、代役を立てることに…その代役はなんと「三谷幸喜」さん。
台本片手に頑張ってるけど、全く娘に見えないwwwでも面白いw
レアな夜だw
松岡茉優ちゃんどうか早く良くなりますように❗️
#江戸は燃えているか— N A O (@tt1411sr) 2018年3月19日
「江戸は燃えているか」今日は勝海舟の娘役さんが体調不良のため、まさかの代役三谷幸喜!!しかも相変わらず三谷さんのままで台本持ち。ちっとも舞台に入り込めないけど、レアななのでよしとする!! #江戸は燃えているか
— と.ま (@tomatonn) 2018年3月19日
次の日からは無事に松岡さんが復帰されたので、この三谷さんの代役回を見た人はとってもレアな思い出になりました。笑
ダブルキャストでの代役
もしその公演がダブルキャストでの上演だった場合、降板した役者と同じ役を担当している役者が急遽舞台に立つケースもあります。
これが一番、スムーズかもしれません。
大きい舞台は別として、小劇場のダブルキャストはお金の匂いしかしないので大嫌いなのですが、こういう保険がある点では重宝するなと思います。
それでも嫌いだけどね
詳しくはこちらをどうぞ。
実際にあった話
ぼくが出演した舞台でも出演者が当日病気になって来なかったことがあります。
そのときは、作品の構成を変えました。
不幸中の幸いで病欠した方がそこまでメインの役ではなかったので、他の演者と演出で協力して上手く物語が繋がるように調整しました。
無事に本番は終わりましたが、当然完全な形の上演ではなかったし、その回を見た方には申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
ちなみに病欠した子の名言
「どうして体調悪いのに休めないんですか!?」
愕然としました。
これ書いておきますけど、「体調悪いのに休めないんですか?」と聞かれたら何も答えられないです。
そりゃ誰だって40度の熱ある状態で舞台やれなんて言えませんから。
だからこそ、そんな質問をするような意識レベルの役者は使ってはいけないとぼくは強く思います。
そんな低レベルの役者が消えていくのはどうでもいいのですが、一緒の作品を作るということは運命共同体になるということなんです。
そういう自分へのハードルが低い方と共演するというのは、かなりのリスクを伴います。
歌舞伎は別格
最後にとんでもない話を紹介します。
それは歌舞伎の場合です。
ぼくは元来、あらゆるジャンルの俳優の中で歌舞伎役者がぶっちぎりで最強だと思っています。
そしてそれは事実です。
歌舞伎で当日降板が出たらどうなるか分かりますか?
わかるかな?
うむむ…
答えはシンプル!「代役を立てる」です。
ですが、それがもう超人過ぎて言葉が出ないです。
例えば一時間半くらいの芝居のメイン俳優が当日に病欠したとします。
え?台詞とかどーすんすか?
全部入ってるんだよ!!
何度も上演されるくらい有名な演目だと、歌舞伎役者の頭には台詞や動きがすでに入ってるんです!!!
付き人時代に何度もその光景を見ましたが異次元すぎて言葉が出ないです。「わかりました、出ます」で衣装合わせて本番成功させちゃうんです。
体調管理が一番大事な役者の仕事
そんなわけで今回は舞台役者の当日降板について書きました。
まとめるとこんな感じです。
- ダブルキャストでない限りは公演中止か構成変更(与えられた時間による)
- 歌舞伎は別格。異次元。
- 降板は誰も幸せにならない。
降板は当人だけでなく関わった人全員が困ります。
だからこそひとつの舞台に出演が決まったらまずは体調管理をすることが一番重要な仕事だとぼくは考えています。
自分の身体が自分だけの身体ではないことをしっかり理解することが先決です。
その意識レベルの高さはそのまま役者としての魅力に比例するはずです。
風邪かな?と思ったらすぐに病院に行く。無理しない、よく寝る。
そういう自分への気遣いの先に素敵な舞台があるはずです。