こんにちは、小野哲平です。
「退職代行」という言葉を聞いたことがありますか?
退職代行とは会社を辞めたい人とその人が働いている会社の間に入って、退職の手続きをしてくれるサービスです。
現在この「退職代行」が急激に広まっています。
今日はそんな退職代行について詳しく書きます。
退職代行サービスとは
「退職代行」は本人に代わって会社と退職の手続きを行うサービスです。
ざっと調べるだけでもこんなにあります。
退職代行EXITの公式HPによると退職までの流れは3ステップ。
- 相談
- 振込
- EXIT
です。相談はスマホでできるのでEXITに足を運ぶ必要はありません。
相談後に雇用形態に応じて代行費用を振り込み、その後はEXITが会社をEXITさせてくれます。
※退職が完了するまで電話・メールは無制限対応
即日対応もしており、「今日から会社行きたくない!」という方も利用することができます。
それらの料金を振り込むだけで簡単に今の職場とオサラバできるわけです。
そして今、このサービスを利用する方が増加しています。
一般的に労働者には退職の自由が保障されており、いつでも会社に退職の意思を表明して、退職することができます。
どうしてわざわざお金を払って退職代行をお願いするのでしょうか。
それを次の項目で紐解いていきます。
どうして退職代行を使うのか
その理由は大きく分けて二つあります。
ひとつは「辞めたいのに辞めれない」。自力では辞められない状況に追い込まれている場合です。
自力で辞めることができない人々
そもそも退職に会社側の承認は不要で、期間の定めのない雇用契約の場合は退職の申し入れから2週間で会社を辞められると民法で定められています。
にも関わらず辞められないのには「退職の意向を受け入れてもらえない」という背景があります。
NHKのクローズアップ現代で退職代行が特集されたときにはこんなインタビューがありました。
高橋大輝さん(仮名)
「“とりあえず考えておくよ”とか“もうちょっと待てよ”とか、結構、向こう(社長)も営業出身なので、うまいようにっていうですかね、あしらわれる形であんまり相手にされなかったですね。」「もう気持ちは固いんでって言ってみたところ、ペットボトルを思いっきり投げつけられたり、ふざけたこと言ってんじゃねえよみたいな形で。そういう対応されたので、自分の力で辞めるのは難しいのかな。」
この髙橋さんは退職届けを社長に受け取ってもらえずに、更に激しく罵倒する言葉がSNSで届いたそうです。そして退職代行サービスを利用しました。
続いて飲食店の店長を任せられていた加藤啓介さん(仮名)。
加藤さんは職場の人手が足りず、毎月の残業時間は100時間を超えていました。激務で体調を崩した加藤さんは退職を決意。上司に伝えましたが、取り合ってもらえませんでした。
加藤啓介さん(仮名)
「『辞めたいという意向はくみ取ってあげるけど、辞める時期はこっちが決めさせてもらう』みたいなふうに言われて、一瞬、思考止まりましたね。どういうことだろうなって。」「罪悪感はもちろん、もうすごいありましたね。(従業員は)大事な仲間だったけど、それを大事にするあまり、自分が壊れてしまうのでは、それは本末転倒なのかな。退職代行を使って良かったとは思っています。」
このような退職者そのものを悪者のように責め立て会社を辞めさせない行為は「慰留ハラスメント」と呼ばれ大きな問題になっています。
上記のように辞めたくても辞められない状況に陥ると、やがて精神的に疲弊してまともな話し合いもできなくなります。
そうやって心を疲弊させ、思考を停止させて働かせるのがよくあるブラック企業の手口です。
しかしながら本人からの退職申し出には耳を貸さない企業も、第三者(代行会社)からの電話があるだけで、慌てて本人の退職の申し出を了承するそうです。
このように苦しんでいる方が退職代行サービスを利用するのは至極真っ当な行動とぼくは思います。
退職の効率化
退職代行サービスが利用されるもうひとつの理由は「退職の効率化」です。
こちらは20代の若者に多いとされる理由で、単純に退職にまつわる会社とのやり取りや上司との話し合いを省略したいので代行サービスを利用するということです。
特に上司とのコミュニケーションにストレスを感じた入社3年以内の20代若手からはそういった理由での依頼が増えているそうです。
現代の若者はお金を積まれても条件が改善されても辞めると決めたら辞めます。
辞めると決めているのに上司に気を使って言い出せずにいたり、調整に労力を割いたりするくらいなら、お金を払ってさっさと辞めたほうがいい。
まさに退職の効率化です。
言いたいことは分かります。
分かりますがこうやって礼儀を欠いた退職をされると今度は会社側は困惑するのでは?
では代行会社を通じて突然退職を告げられた会社側のインタビューを見てみましょう。
困惑する会社側
保育施設を運営している田中久美子さん(仮名)は信頼していた女性保育士から代行会社を通じて突然退職を告げられたことを未だに納得できないと話しています。
田中久美子さん
「ムードメーカーでニコニコ笑って、子どもから慕われる、いい保育士でした。」「『今度は私がリーダーでやりたいです』みたいなことを、連休に入る金曜日におっしゃっていたそうなんですね。それで連休明けの朝に代行業者から電話が来たので、もう私たちは誰のことを言っているのか分からずに、とても困惑しました。」
「私たちは信用性の上にたった関係だと思っていたんですけど、非常に私としてはショックでした。そこまでして辞めたいと思った理由はなんですかとお聞きしたいです。」
仕事を辞めれる権利は有しているけど事実として「いつでも辞めていいよ」というわけにもいかないのが会社側の視点です。
しかし退職代行サービスが広がることで、将来を期待していた若手社員が突如退社する可能性もグンと上がりました。それが原因でクライアントに迷惑をかけることもあります。
若者の働き方に対する価値観
「コスパ」という言葉に表れているように現代の若者は非効率であることを嫌います。
自分たちの時代がそうであったように部下とコミュニケーションを取るために飲み会を開いたりすることは、若者には面倒なだけです(好きな人もいます)。
効率よく仕事をして効率よく時間を使う、これが今の若者の価値観に近いとぼくは考えます。
それと仕事とプライベートの分断が以前より色濃くされていて、そのプライベートの時間に仕事の人間が介入してくることを快く思いません。
インターネットやスマホと共に成長した人間は無限に広がる情報から自分に必要な情報だけを取捨選択する能力が自ずと身についています。
「就職先でどの上司に当たるかはガチャ(運)」でしかないことも十分理解しています。
ぼく個人が思うには辞めてもらわないように若者に気を遣って接するよりも、彼ら(彼女ら)が求めている条件さえ満たせば、そこに価値を見出すので仕事は辞めないと思います。
逆に言うと条件を満たしていない場合は上司に非がなくても辞めます。
それが現代の若者です。
「SNS村」で生きる若者に、これまでの職場の常識は通用しません。
今を生きる若者の思考についてはこちらの本に詳しく書かれています!
日本社会に退職代行が与える影響
今現在日本はどこも人手不足です。
人手不足にも関わらず終身雇用は幻となり消え去りました。
要するに会社に必要なときは働いてもらうけど不必要になったら辞めてね、という図式です。
その中で労働者、特に若い人材は会社を人生の柱と思わなくなってきています。
ひとつの会社に執着せずにその時々の自分の状況に応じて転職を繰り返す生き方が珍しくない昨今、退職代行サービスはその生き方を大きく増長させるサービスです。
EXITの代表は退職代行について「本来は不要で、いつかなくなるべきサービス」と話しています。
会社側と社員がしっかり話し合い、双方納得した形で退職を迎えれればそれに越したことはありません。
しかしながら人手不足でどうにか働いてもらいたい会社と、退職・転職が当たり前になっていく若者の価値観の変化は簡単に埋められないものです。
これからの時代、退職代行は珍しいサービスではなくなるとぼくは思います。
あなたひとりがいなくなっても会社は回ります。
しかしあなたの人生はあなただけのものです。