こんにちは、小野哲平です。
先日こんなネットニュースを見つけました。
歌舞伎の「三階さん」過酷ながらも給料20万以下、廃業増加
「梨園の御曹司や、子役の頃から幹部俳優の家に預けられる部屋子とは待遇がまったく違います。彼らは舞台を下りた後も、修業と称して師匠やその家族のお世話までする。しかも、ハードな割には給料が安く、月収は20万円にも満たないといいます。とんぼを切れば手当てがつきますが、どんなにとんぼを切っても、1か月1万円にしかなりません。とんぼを切りすぎて、体を痛めた役者もいました」(前出・歌舞伎関係者)
歌舞伎役者の待遇問題。
これは今に始まったことではなくずっと水面下で存在していた問題です。
今日はこの件について、思うことを書きます。
著者紹介
簡単にぼくの説明をしておきます。
ぼくは当代中村芝翫の付き人として、2007年~2009年まで梨園に身を置いていました。
2016年の成駒屋襲名も手伝っています。
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なので外から見た歌舞伎よりも内側から見た歌舞伎を知ってます。
そのうえで歌舞伎が好きで、伝統芸能に日々その命を燃やしている歌舞伎役者は本当に尊い存在だと思っています。
しかしながら伝統芸能というのは、やはり俗世間から離れた場所に存在しているもので良くも悪くもおかしな点が多々見られます。
しかし歌舞伎は完全なる格差社会なので、そのことを声高に言える人間が内部にはいません。
ぼくがこのように書くことも面白く思わない方々もいるかと思います。
ですが、ぼくは歌舞伎を愛する人間として、歌舞伎の未来を考える人間として、そしてまたブロガーとして今日は思うことを書きます。
お弟子さんは薄給である
歌舞伎役者というと皆さんは誰を想像しますか?
若い方の中ではやはり海老蔵さんが一番に登場する方も多いでしょう。
続いて猿之助さん、愛之助さんでしょうか。
獅童さん、松也さんも有名かも知れませんね。
今、挙げた役者、そしてそれ以外でも、皆さんが知っているであろう歌舞伎役者は皆、
幹部俳優と呼ばれる面々です。
一部例外もありますが、幹部俳優のほとんどが歌舞伎の家に生まれ、幼少から歌舞伎役者になるように鍛錬を重ねてきた方々です。
その幹部俳優に弟子入りし、師匠の着付けを手伝ったり、舞台上での後見などをしながら役者として舞台に立って芸を磨くのがお弟子さんです。
幹部俳優だけでは歌舞伎は成立しません。
舞台上でも裏でも師匠を支えるお弟子さんの存在は必要不可欠です。
ですが…
今、問題になっているのがこのお弟子さんが、次々に廃業していることです。
もちろん各人、廃業理由はそれぞれあると思いますが、内部を知ってる人間なのでズバッと書きますね。
お弟子さんは超忙しいのに全然お金がもらえません。
月の休みは1日程度
ぼくが付き人してるときに、仲の良いお弟子さんとこんな会話をしたことがあります。
「テッペイ(ぼくのことです)って幾らもらってるの?」
「○○円です」
「俺それのもっともっと下だよ」
ぼく、このとき冗談かと思ってたんです。
いやいやそんなわけないでしょ、と。
でも…本当でした。
具体的金額は書きませんが、アルバイトの方が遙かに稼げる金額です。
まともな生活はできません。
勿論家によって師匠からの上乗せがあるところもあるのかと思いますが基本給はとても低いです。
こういうこと書くと、弟子になるやつが少なくなるからやめろ!
って怒る関係者出てくるんですけど、
隠蔽してどうするんですか??
若者騙して働かせるんですか??
もっと明るみに出して問題にすべきです。
歌舞伎を好きな人が、大好きな歌舞伎の世界で働いて、見る人を喜ばせたかったのに、辞めなきゃいけない理由がお金では悲しいです。
売れない俳優や芸人なら理屈は通ります。
だって仕事がないから。
でも歌舞伎役者は月に休みが1日くらいで、毎日ずっと仕事しているのに生活できない報酬なのです。
これではやりたい人もやりたくなくなります。
誰もやりたくない仕事は誰もやりません。
ロボットか、その仕事しかできない人の仕事になります。
時代と逆行してるのが歌舞伎の現状です。
歌舞伎の未来は明るくない
率直に申し上げて、このままでは歌舞伎は衰退の一歩を辿ることになるでしょう。
お弟子さんが減っていくからです。
収入を度外視して好きなことができる時代じゃありません。
お弟子さんがいなくても成り立つシステムの導入か、お弟子さんの待遇を良くするか。
何か手を打つべきです。
どれだけやりたい仕事でも、最低限の生活を確保しないとできません。
ほとんどの人がそうだと思います。
そして歌舞伎は会社員と同じで、どれだけ頑張ってもすぐに給料は増えません。
スタートが低ければ低いままです。
時代は変わりました。
夢の為なら一生貧乏でもいい。
そういう若者を探すよりも根本的なシステムの見直しをすべきです。
じゃないと皆やめちゃうよ。