こんにちは、小野哲平です。
このブログを読んでくださる方の中には、
ぼくなんぞよりも遥かに歌舞伎に精通してる方が多いと思います。
実際に劇場に足を運ぶことも多いでしょう。
そこであることに気付きませんか?
空席です。
歌舞伎の聖地である歌舞伎座でも時々、客席から分かるくらいに空席が目立ちます。
鑑賞した方のブログやTwitterからも空席状況の報告があがっているほどです。
歌舞伎座顔見世、ええやん!
割と空席目立ち不安になりますが……
研辰の討たれは通し?と、通しではないものの台詞劇の髪結新三が三幕で、見取りしすぎるよりも芝居を見た気になる。
脇がしっかりベテランで固められてて良いと思った。
秀山祭より渋かったのではないかと思うほど。— Tea (@TeaTheTheatre) November 22, 2019
昨日の歌舞伎座、ずいぶんちびっこが多かったけど、亀三郎くんやまほろくんが出てるからかしら?歌舞伎座も空席目立ちました。芋洗勧進帳で松緑さんが「台風の影響も残るなか」と言っていたけど、ホントにそんな感じ。
— こぼちゃん (@azumakudari2012) October 14, 2019
歌舞伎座、昼の部、なんとも寂しい客の入り。団体なんだか二階席は埋まってるものの、一階はスカスカな感じ。前の方も、上手側の空席が多い印象。
— 株屋 (@inari4t) October 11, 2019
国立劇場などはもっと深刻。明らかに客席がスカスカのときもあります。
国立劇場空席が目立つらしい。儲け主義に走って文化や伝統の継承を蔑ろにしたらいかんけれどもさ、松竹とは違う役割があるのもわかるけどさ、もう少し客を呼べる座組にして少しでもかけたお金を回収出来る様考えてもらいたいよ。血税使ってやってるわけだから。
— しら菊 (@srgk) October 16, 2015
国立劇場『孤高勇士嬢景清』2回目。四幕目「日向嶋浜辺」「日向灘海上」。吉右衛門の景清の哀れさが深まって糸滝との再会に感動があった。ただ複雑な心の動きは曖昧だったかもしれない。景清の祈りと吉右衛門自身の歌舞伎への想いが重なったようにも思えた。多くの空席をどう見たのだろう。思い巡らす
— 劇場の天使2 (@theaterangel2) November 8, 2019
関連記事 → 【中川 右介】平成最後の歌舞伎座で、空席が目立ってきた必然的な理由
え?ナウシカ歌舞伎は満席だったよ!
と反論される方もいるかもしれません。
ただ、ナウシカ歌舞伎は古典ではなくアニメ作品の舞台化です。
カテゴリとしてONE PIECE歌舞伎やナルトと同じと考えられます。
ナウシカやONE PIECEに人が集まり、どうして歌舞伎座の演目には人が寄り付かないのか。
そしてその事実が歌舞伎の未来にどう影響するのか。
今日はこの「歌舞伎の流行」についてお話したいと思います。
歌舞伎が不人気とは決して思いませんが、歌舞伎に興味を持つ若者が少ないのは事実です。

同世代の友人で歌舞伎を見てる人はいません…
ぼくが思う問題解決に向かうヒントは「インスタ映え」です。
歌舞伎役者や歌舞伎を長年愛する人の「歌舞伎とはこうあるべき」という意見と、歌舞伎に触れたことのない一般人のイメージを練り合わせて、極めて主観的でありながら客観的な意見を述べたいと思います。
歌舞伎はなくならない
まず歌舞伎の人気と申しましても、
そもそもが伝統芸能なので流行り廃りが存続を決するようなものではありません。
過去から現代へ、そして現代から未来へ芸を繋げていくことが伝統芸能の責務であり魅力です。
その「芸の継承」にファンは心を打たれ、何代にも渡って応援していきます。
歌舞伎役者が何代も続くように、親子何代に渡って贔屓をしている家系も存在します。
確かな層が存在しているので、
歌舞伎ファンが一気に大きく減るということは今後も考えられません。
そこが罠です。
一定数の贔屓はなくならないので歌舞伎存続は問題ないと誤認してはいけません。
歌舞伎はビジネスである
根本的に歌舞伎はビジネスです。
「芸の継承」と聞こえのいい言葉だけでは成立しません。
利益を目的とした興行である以上、客席を埋めなければいけないのです。
現状空席でも松竹が困っている雰囲気は感じませんが、関わってる人間の数、動いているお金、劇場維持費を考えたときにいつまでも空席が続いていいはずがありません。
多方面の商売をしている松竹であれど歌舞伎集客は諦めている、ということはないと思います。
散々問題視されていた休演日も(収益的に)一日も休みにしたくない事情があったのではないか、とぼくは考えています。

担い手がいない
客席が埋まらないと次にどういうことが起きるか。
歌舞伎役者になりたいと思う人が少なくなります。
それは一般社会と同じです。
人気のない職業に応募は集まりません。
ぜんぜん客席埋まらないけど歌舞伎やりましょう!
というのは誘い文句としても強引です。
しかしお弟子さんの存在なくては歌舞伎は成立しません。
- 収益の低下
- 担い手不足
この二点だけ見ても、歌舞伎に空席が目立つことに良いことなどありません。

なぜ客が離れるのか
では、どうして歌舞伎座に客が増えないのか。
幾つかの要因がありますがシンプルに言えば
歌舞伎が人々の身近にないから、です。
なぜONE PIECE歌舞伎やナウシカ歌舞伎に人が集まるのかを考えれば一目瞭然です。
あちらは原作人気がある作品、つまり身近にある作品です。
過去に(原作に)触れる機会があった作品、といえば分かりやすいでしょうか。
それと比べて、残念ながら普通に生活をしていて歌舞伎に触れることはほぼありません。
不確かなものに人はお金と時間を払いません。
マクドナルドや吉野家が地方でも繁盛しているのは一定の満足が保障されているからです。
どこで食べても美味しいから客が集まる。
この御時世、美味しいか分からないものにわざわざお金を払う人は少ないです。
人は失敗したくない生き物です。
歌舞伎に行かないのも同じ理屈です。
例え誰かに強く誘われたとて、今まで触れたことのないものに時間とお金(しかも高額)を払うのは強く抵抗があるのです。
ぼくが歌舞伎に足を運んで他の芸能に行かないのも近い理由があります。
中間に該当するモノががない
だったらONE PIECEやナウシカで集客して、そこで歌舞伎に興味を持った方を歌舞伎座や国立劇場に流入しよう!!

一度見てれば歌舞伎初心者ではなくなるし抵抗もなくなるはず。
誰もがそう思いますよね。
むしろ元々歌舞伎座に流入する為にONE PIECE歌舞伎など歌舞伎初心者が親しみやすい演目が作られたといっても過言ではないと思います。
ではONE PIECE歌舞伎を見ましょう。ナウシカを見ましょう。
歌舞伎面白いかも…!!
そう思った方が歌舞伎座で見る演目が古典。
…いじめやん。
高低差ありすぎて耳キーンなるわです。
この辺が全く考慮されてないんですよね。
スーパー歌舞伎と古典の真ん中くらいの作品が都合良く上演されてるわけじゃないんですよね。
むしろ古典はあらすじを全部理解した上で役者による芸の深さを堪能するのが趣なので、そもそも初心者が楽しめる演目ではありません。玄人向けです。
他の劇場で興味を持ったら聖地で返り討ちに遭う。
このように歌舞伎は幾つもの贔屓予備軍を取り逃がしてきたと思います。
それによって引き起こすのは客の二分化です。
スーパー歌舞伎は観るけど歌舞伎座は見ない。その逆もあると思います。
でも本来、歌舞伎役者が伝承しなければいけない芸はどちらですか?
このままでは歌舞伎が伝統芸能として立派な椅子にふんずり返ってる間に、
誰も本来の歌舞伎を見たいと思わない時代になってしまいます。
若者人気を掴むには
ここからがぼくの持論です。
歌舞伎の客席を埋めるには、先程も述べたように歌舞伎を身近なものにしなければいけない。
それをどうするか。
- 初心者向け興行
- 映像発信
- 歌舞伎のインスタ映え
この三つを提唱します。
初心者向け興行
歌舞伎座12ヶ月興行のうちの1ヶ月は思いっきり初心者に分かりやすい演目で構成すべきです。
大幹部は皆さんお休みの花形歌舞伎でどうでしょう。
花形歌舞伎というと若手が大役をやる印象ですが、そうではなくて、これから末永く歌舞伎を応援してくれる観客に向けて一緒に成長していきましょうね、という意味合いでの若手メインです。
歌舞伎の見方のように説明するのではなく、あくまでも芝居だけで。
値段も据え置きで三部構成。正直初心者は四時間も見れません。

もう少し見たいかも…くらいで帰すのが次に繋がりますよ
映像発信
スーパー歌舞伎やナウシカで歌舞伎に興味を持ってくれた方が歌舞伎座に来るまでのクッションになり得る媒体として、「講義&舞台映像がセットになった動画」を幾つか公開すべきです。
歌舞伎役者が講師を行うことで親近感も湧くでしょう。
他にも松竹監修で「話が難しい演目ベスト5!」なんてやったら面白いと思うのですが…。

話が難しいってことを笑い飛ばすくらいの隙がないと尚更敬遠されるだけです。
前述のように人は不確かなものにお金と時間を払いません。
歌舞伎の公式チャンネルの存在は来場者の不安を取り除き、期待を持たせることができるサービスです。

コンセプトは「歌舞伎を身近に」!
タピオカはインスタ映えする
ここで話は逸れますが、少し前まで空前のタピオカブームだったのは記憶に新しいと思います。
よく分からない間に「タピる」という言葉が流行語になり、タピオカ店では毎日人が並ぶようになりました。
そのブームの要因のひとつにインフルエンサーの影響があります。
インフルエンサーがオシャレにタピオカを飲んでる姿を自らのSNSに上げ、そのフォロワー達が「私も真似したい!」とこぞってタピオカを飲み始めました。
若い子が必ずやるのが「タピオカを飲んでる写真をSNSにアップ」すること。

インスタ映えってやつです。
彼女らはこのタピってる写真を撮る為にタピオカを購入してます。
つまりタピオカの味云々よりも「タピオカを飲んで写真を撮る」という行為がブームになったのです。
ここに若者の目を歌舞伎に向けるヒントがあります。
歌舞伎のタピオカ化
人は理由がなければ自ら足を運びません。
歌舞伎に足を運ばせるには、
歌舞伎に来ることでその人がメリットを感じるようにしなければいけません。
もちろん演目を楽しんでもらうのが大前提です。
しかし歌舞伎には当たり外れがあります。
つまらないものはつまらない。
わからないものはわからない。
高いお金を払ってつまらなかったら悔しいです。
しかし「歌舞伎を見る」という行為自体がトレンドになればどうでしょう。
歌舞伎を見ただけで「観る=オシャレ」というひとつの目的は達成されているので演目によって大きな不満足を生むことはありません。
歌舞伎を理解して楽しむよりも「歌舞伎を観る」という行為がオシャレになれば確実に分母は増えます。
分母が増えれば深く歌舞伎に興味を持ってくれる人も増えるでしょう。
まず来させなきゃダメなんです。
歌舞伎座前でもパシャパシャ写真撮らせてどんどんアップさせましょう。
そういう行為を流行らせることが大事です。
松竹が独自で宣伝をするよりもインフルエンサーの1投稿の方が何倍も影響力があります。
あくまでもインスタ映えは言葉のあやですが、そういう視点から経営戦略を進めていくと活路が見出だせるのでは、とぼくは思います。
海老蔵さんはタピオカ。
歌舞伎を観る行為に何かしらの付加価値を付ける。
ここまで読んでもうお気付きかと思います。
今現在、それを実行してるのが市川海老蔵さんです。
海老蔵さんは現在、歌舞伎座を満席にできる貴重な千両役者です。
今月の歌舞伎座空席なし。なんだかんだいって海老蔵は客を集められる役者なんだな。もちろん勸玄君効果もあると思うけど。8月も宙乗りがあって席が少ないからもう3B売り切れ出てるし。
— ああると (@alzasu) July 8, 2019
海老蔵さんを一目観るために多くの方が劇場へ足を運びます。
それにはあの狂気的なブログ更新量が多大に関係しています。
海老蔵さんは自分自身を人々の身近な存在にしたのです。
歌舞伎がわからなくても海老蔵さんは見たい!!
そう思う方も多いでしょう。そうなればまず最初のステップはクリアです。
ファーストステップをクリアするためには芸のチカラよりも影響力が必要なのです。
- タピオカそのものよりもタピって写真を撮るのが楽しみ!
- 歌舞伎そのものよりも海老蔵さんを見るのが楽しみ!

素晴らしい影響力です!
我が子よりも全体を考える
歌舞伎役者の人生は「領地の取り合い」と言っても過言ではありません。
この役はこの役者。
この出し物ができるのは誰々と誰々。
この役者が出るときは相手役はあの役者。
あの役は誰々しかできない。
まさに領地の取り合い、陣地の奪い合いです。
如何にして地位を築き、我が子に役を付け(経験をさせて)、家を繁栄をさせて生涯を閉じるか。
生涯修行、生涯歌舞伎です。
そこには畏怖の念すら感じます。
当然我が子だけでなくその場面場面で力を持つ各々が適した役者に芸の継承を務めます。
ですがそれは歌舞伎内部の話です。
歌舞伎そのものの存続や発展を考えたときには、芸の継承と同じくらい歌舞伎人気を考えなければいけません。
少なくとも今、若者にとって歌舞伎は身近にない存在です。
そこをどう考えるのか。
ずばりインスタ映えに学ぶ新時代の集客プランを思案すべきです。
敷居の高い芸術でありながらもどうすれば人々の身近になるか。
そこで成果を挙げた役者が次の時代の中心に名乗りを上げると、ぼくは期待しています。