コラム(不定期更新) 怖いネカフェの話

初舞台で借金生活!?夢を目指す若者よ、搾取されたくなければ知識をつけろ!

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俳優関係

こんにちは、小野哲平です。

俳優をしています。

 

小劇場は素晴らしい団体や作品が星の数ほど存在している一方で、それと比べ物にならないくらいの深い闇が存在します。

お金さえあれば誰でも劇場を借りれるし、役者をやりたければ経験の有無を問わず掲示板に常に大量の募集が掛かっています。

 

望めば誰でも舞台に上がれるので、とんでもなく素晴らしい役者と何にもできない素人が混合している世界です。

 

今回のお話は「何も知らないまま役者を始めた若者の話」

 

チケットノルマの十分な説明もなく、知らないうちに時間とお金を搾取され、気付いたら借金を背負う形になっていた役者のケースを紹介しましょう。

本当にあった話です。
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夢を求め上京

地方住みの彼女は芸能事務所の所属オーディションに合格し、憧れの女優になるべく数年間勤めていた仕事を辞めて上京しました。

 

東京で一人暮らしを始めた彼女。そのとき年齢は23歳。

世間的には若いですが女優を目指して演技を始める年齢としては決して早くはありません

 

家具や電化製品、物件の契約料、上京費用を差し引いて残ったのはわずかばかりの貯金。

それだけで生活するのは難しく、彼女は居酒屋でアルバイトを始めました。

 

これから始まる夢への物語。

彼女は東京での新生活に胸を躍らせていました。

レッスンの日々

その芸能事務所では週に三回、演技のレッスンがありました。

演技の経験がない彼女は一生懸命レッスンを受けました。

 

レッスンには彼女の他にも10代の若者が数名いました。

彼女は自分の年齢も鑑みて誰よりも熱心にレッスンに取り組みました。

 

彼女を含め皆、夢を叶える為に必死でした。

彼女が知らなかったこと1

彼女は所属料というお金を月事務所に払っていました

マネジメント料です。

 

しかしその契約書には「芸能の仕事を確実に斡旋する保障はない」と書かれていました。

それはどの芸能事務所でも同じです。

 

彼女は何の疑いもなく契約書にサインをしました。

事務所からは何の仕事も回ってきませんでした。

 

彼女は知らなかったのです。

 

その事務所はタレントを働かせて利益を上げるのではなく、

最初から所属タレントのマネジメント料で利益を上げることをビジネスとしていました。

 

オーディションを経て「うちの事務所に所属してほしい」と言われればフリーの役者は喜びます。

自分が認められたような気持ちになります。

 

しかし実際はオーディションなんてあってないようなものです。

その事務所の目的はただひたすら所属タレントを増やすことでした。

舞台が決まる

レッスンが数ヵ月を過ぎた頃、事務所が所属タレントを使って舞台を作ると発表しました。

事務所制作の舞台です。

 

この舞台に芸能関係者を沢山読んで皆を売り込む!!

 

事務所の社長のこの発言は所属タレントを高ぶらせました。

 

彼女を含め、皆が喜びました。

彼女にとっては初舞台。

地方から家族を呼ぼう。

 

彼女はそう思い、その日も熱心に演技レッスンを受けるのでした。

ノルマが発表される

台本が完成して舞台の稽古が始まりました。

この作品で今後の人生が決まるかもしれないと、皆が必死で取り組みました。

 

稽古が中盤に差し掛かったとき、事務所からチケットノルマが発表されました。

 

「チケットノルマは一人35枚で未消化分は買い取りです」

 

…チケットノルマ??

 

すぐに理解したタレントもいましたがこれが初舞台の彼女には何のことだかわかりません

 

彼女はレッスン終わりにチケットノルマの意味を他のタレントに聞きました。

「35枚売れなかったら売れなかった分を自分で払うんだよ」

え…何で?

 

舞台というものがギャラがもらえる仕事だと思っていた彼女はこのチケットノルマというシステムに衝撃を受けました。

 

地方から出てきてすべての時間をバイトとレッスンに費やしている彼女には東京に知り合いなんてほとんどいません。

そしてまた、彼女は人見知りで上手に知り合いを増やせるタイプでもありませんでした。

 

35枚はおろか10枚売れるかどうか…。

 

しかし稽古も中盤でチラシもとっくに完成していたので今更降板するわけにはいきません。

稽古がある日はバイトができないので、稽古場までの交通費や日々の生活で彼女の貯金は徐々に底が見えてきました。

 

そしてその稽古期間も女たち所属タレントは所属料を事務所に払っていたのです。

彼女が知らなかったこと2

その芸能事務所は芸能関係者が立ち上げた事務所ではなく全くの芸能素人が作った事務所でした。

前述のように元々所属タレントを増やすことで所属費をもらって利益を上げることを目的としていたので、タレントを売り出すことを考えていません。

というか売り出し方を知りません。

 

この事務所にとっては如何にタレントにお金を出させるか、そこだけがポイントでした。

 

仕事がなく、毎月お金を取られているだけの状況に気付いたタレントは徐々に事務所をやめていきました。

 

しかし事務所にとってそんなことは痛くも痒くもありません。

役者になりたい若者は世の中に腐るほどいるのです。

 

そこで事務所は舞台を打つことにしました。

チケットノルマを導入することで確実に利益を上げれるようにすれば興行の失敗はありません。

ノルマをそのままにしてダブルキャストにすれば収益は2倍です。

 

舞台を成功させる為にチケットノルマが必要で、演劇界でこのシステムは当たり前である。

彼女はそう理解しました。

 

彼女も、彼女にチケットノルマのシステムを教えたタレントも、チケットノルマで本当に得をするのが誰か知らなかったのです。

関連記事【役者必読】舞台主催者がチケットノルマを使って爆速でお金を稼ぐ方法。

ガラガラの客席

舞台の初日が空きました。

客席は空席だらけです。

 

それもそのはず事務所は営業も宣伝もしていません。

公演HPもなければTwitterアカウントもありません。

 

出演者が呼んだ客しかそこには座っていません。

当然、芸能関係者など一人もいませんでした。

 

しかしそんなことは一切知らない彼女たちはこの演技が誰かに届くように全力で芝居をしました。

事務所に借金

そして舞台が終わりました。

満員の日はなく、最後まで空席が目立つ公演でしたが客の反応は上々でした。

 

そして彼女たち出演者は全てを込めて熱演しました。

それは今までに感じたことのない達成感でした。

 

しかしチケットノルマは消えません。

 

結局、彼女が呼んだ客は地方から来てくれた家族(3枚)とバイト先の知り合い(4枚)で計7枚でした。

35-7=28

28枚は買い取りです。

 

彼女は事務所に98,000円(3500×28)を支払わなければいけません。

98,000円…大金です。家賃を遥かに越えた金額です。

 

貯金が底をついていた彼女がその金額を払えるわけもなく、彼女はひとまず事務所に借金をするという形で今回の公演を終えました。

出演料はゼロ。

 

出演者の家族や友達しか来てない舞台で芸能の仕事が増えるわけもなく。

彼女がその舞台で得たのは沢山の思い出と10万近い借金でした。

彼女が知らなかったこと3

彼女は舞台が楽しいことを知りました。

皆でチカラを合わせてひとつの作品を作ることは何て楽しいんだろう。

そしてそれが夢に繋がっていくなんて。

 

彼女は借金を抱えたものの、それは消費者金融ではなく所属事務所への借金なので、

芸能の仕事が来たときに少しずつ返せると本気で思っていました。

 

彼女は知らなかったのです。

 

楽しいだけじゃ何も起こらないことを。

 

そんな学芸会レベルの舞台を100年やったところでプロにはなれません。

客の反応がいいのは客が全員身内だからです。親はどんな作品でも賞賛します。

 

事務所はタレントをやめさせないことが一番大事なので、この舞台が次に繋がる一歩であったことを強調しました。

 

彼女はまだ、事務所を疑っていませんでした。

その後の話

舞台が終わってすぐにレッスンが再開され、彼女を含む出演者はすぐに所属費を請求されました。

各々チケットノルマで出た借金が残っているのにも関わらず、です。

 

居酒屋のバイトだけではどうにもできずに彼女は別のバイトを探しました。

もう彼女は事務所にお金を払う為だけに働いていたのです。

 

舞台収入に味を占めた事務所はその半年後にまた舞台を作るのでした。

彼女はもちろん出演しました。

 

そしてそれもまた、チケットノルマがある舞台なのでした…

応援してくれる人(チケットを購入してくれる人)が増えるより早くチケットノルマがある舞台に出演を続けることは自殺行為である。

彼女が知らなかったこと4

そもそもこの事務所は彼女を金づるにする気でした。

世の中にはお金の為に信じられないくらい冷酷になれる人がわんさかいるのです。

 

彼女が一人暮らしを始めた家は事務所が紹介してくれた不動産屋で見つけた物件でした。

 

地方から上京してくるタレントには事務所が不動産屋を紹介していたのです。

おのぺー
おのぺー

もうお分かりですね?

ののみー
ののみー

そういうことっすか…(青ざめ)

だいらく
だいらく

え、どういうことっすか?

さとこ
さとこ

不動産屋もセットのオーディションなんですね!

この事務所のやり口は

  1. 表向きには倍率があるように見せ掛けた適当なオーディションを開く。
  2. 他のタレントに内緒で全員合格させる(個別オーディションだからバレない)
  3. 面接する。めっちゃ褒める。夢を語る。
  4. 所属させる。
  5. 地方組には不動産屋を紹介して仲介料をもらう(グルである)
  6. 所属費をむしりとる。
  7. 低予算で舞台を作る。
  8. チケットノルマでむしりとる(所属費も継続)

つまり所属タレントは皆、事務所スタッフの懐を潤す為に日夜アルバイトに励んでいたのです。

 

彼女は知りませんでした。

 

熱心に相談に乗ってくれ、夢を語り合った事務所スタッフが悪人だったことを。

自分の才能でオーディションに受かったのではなく、誰でも受かるオーディションだったことを。

そして何より、夢を搾取することを生業にしている人たちの存在を。

 

なにもかもを、彼女は知りませんでした…

2019年現在、この芸能事務所は存在していません。

情報弱者は搾取される

もしあなたが本当になりたいモノがあるのなら、徹底的にその業界について詳しくなる必要があります。

 

そうでなければ狩られます。

情報弱者はいつだってカモです。

彼女は女優になりたかっただけで芸能詐欺についての勉強を一切していませんでした。

 

そしてまた純粋に女優になりたいという真面目な気持ちが仇となり、この努力の果てに夢が待っていることを疑わなかったのです。

 

彼女が事務所に払ったお金があれば、もっと専門的に演技を教えてくれる場所にも通えたし、映画監督のワークショップだって受けることができました。

 

夢を追い求める情熱があるのならそれと同じくらいの熱量で夢を守る防御力を持たなければいけません。

 

追い求める情熱だけでは狩られます。
防御力だけでは何も掴めません。

 

どちらかだけではなく、その二つが必要なのです。

 

今回の例は芸能でしたが、どの世界でも甘い話には裏があるはずです。

夢を搾取されたくなかったら知識をつけましょう。

 

あなたの夢を守るのは他ならぬあなたなのです。

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